30分後に、手元に残るもの
終わったときに、こうなっていれば成功です。
- 何が起きたかが、時系列で書き出されている
- 要因が、自分の落ち度ではなく仕組みの言葉で1つ以上書かれている
- 次に変えることが1つ決まっていて、いつ・何を見て効果を確かめるかも決まっている
- それが、あとから読み返せる場所に置かれている
逆に、「自分が悪かった。次は気をつけます」しか残っていないなら、うまくいっていません。気をつけるは、忙しくなると最初に消えます。そして次に同じ場面に立つのが別の人なら、その心がけは引き継がれません。
まず確認です。本当にひとりでやるしかないでしょうか。当時の状況を知っている人が1人でもいるなら、その人と30分話すほうが、ひとりで1時間かけるより多くのことが見えます。チームでやるも読んでみてください。
そのうえで、集められないことはあります。ひとりで受けた案件。すでに解散したチーム。聞きにくい相手。そういうとき、ポストモーテムを諦める必要はありません。
ひとりだと、なぜ自責で止まるのか
ひとりでふりかえると、たいてい「自分が悪かった、次は気をつけます」に着地します。そして、そこから動きません。
これは、性格の問題ではありません。ひとりという条件そのものの問題です。
ひとりのふりかえりには、はっきりした弱点があります。自分の視点からは出られないことです。自分が気にしていることには何度でも目が向きますが、気にしていないことは、何度ふりかえっても視界に入ってきません。
ポストモーテムでこれが起きると、どうなるか。自分の落ち度ばかりに目が向き、仕組みが視界に入りません。自分の行動は詳細に思い出せるのに、その行動を取らせた状況のほうは、背景に沈んだままになります。
テンプレートを埋めても、これは変わりません。埋める作業は整理であって、整理とは自分の中にすでにあるものを並べ替えることだからです。並べ替えても、視点は動きません。視点を動かすのは、自分の外から来る問いだけです。
くわしくは ひとりのふりかえりにAIを使っても、頭が整理されるだけで終わっていませんか に書いています。
チームが果たしていた役を、AIに頼む
チームでやるとき、他の人は4つの役を果たしています。ひとりのときは、それをAIに引き受けてもらいます。
| チームが果たしていた役 | ひとりだと | AIに頼むこと |
|---|---|---|
| 別の視点から事実を足す | 自分が見た範囲しか出ない | 「そのとき他の人には何が見えていたと思いますか」と聞いてもらう |
| 「なんでそう思ったの」と聞く | 自分の解釈を疑わない | 前提を掘る問いを投げてもらう |
| 人ではなく仕組みへ引き戻す | 自責で止まる | 「仕組みとして見るとどうですか」と戻してもらう |
| 学びを受け取る相手になる | 書いて終わり、読み返さない | まとめを言葉にさせ、残る形にしてもらう |
AIは、他の人の代わりです。他の人より優れているわけではありません。人に聞けるなら、そのほうがいい。聞けない・聞きにくいときに、対話の相手を頼んでいい。今日はそれがAIでも構いません。
30分の進め方
段は飛ばしません。飛ばすと、反省会に戻ります。
ひとりでも、ここは省略しません。自責が強いまま進めても、結論は最初から決まってしまいます。
最初に、声に出すか書くかしてください。「そのときに分かっていたこと、自分のスキル、使えたリソース、置かれた状況を考えれば、自分はベストを尽くした」。納得できなくても構いません。いったん置いてみることが大事です。
それでも「でも自分が悪かった」という気持ちが強いなら、先にそれを全部書き出してください。抑え込むと、あとの段で何度も顔を出します。言い切ってから始めたほうが、結果的に早く進みます。
評価をせず、事実だけを時系列で書きます。「まずかった」「判断ミスだった」が出てきたら、それは次の段まで取っておきます。
- いつ、何が起きましたか
- いつ、どうやって気づきましたか
- 気づいてから、何をしましたか
- いつ、何をしたことで収まりましたか
ひとりのときは、ここに2つ足します。見ていなかった範囲を意識的に埋めるためです。
- そのとき、他の人には何が見えていたと思いますか
- 自分が見ていなかった時間帯はありますか。そこでは何が起きていたと思いますか
いちばん引っかかっているところを1つ選んで、そこを掘ります。30分では全部は掘れません。
- 何があって、そうなったのでしょう
- そのとき、手元にどんな情報がありましたか
- その判断は、当時の情報で見れば妥当でしたか。妥当だったなら、問題は判断ではなく情報の届き方かもしれません
- 他にも要因はありませんか
ここで自責が出たら、次の2つを使います。この2つが、ひとりのポストモーテムでいちばん効きます。
- 同じ状況に別の人が入っていたら、同じことが起きたと思いますか
→ 起きるなら、それはあなたの問題ではなく仕組みの問題です - これを同僚から相談されたら、あなたは何と言いますか
→ 自分に厳しく他人に優しい人ほど、ここで視点が動きます
ここが本題です。「気をつける」で終わらせないこと。
- 「自分が気をつける」以外の対策を、3つ挙げるとしたら何ですか
→ ここは粘ってください。1つだと、自責のままの結論になります - それは人が気をつけなくても効きますか
- その対策は、あなたがいなくても機能しますか
- うまくいったかどうかは、いつ・何を見れば分かりますか
やることは1つに絞ります。ひとりで3つ抱えても、実行されません。
書いて、読める場所に置きます。ひとりでやったとしても、次に同じ状況に出会う人(それは未来の自分かもしれません)に渡すつもりで書いてください。
- 今回の学びを一言でいうと、何ですか
- 今日のふりかえり自体は、どうでしたか
まとめの形
30分の終わりに、この形で書き出します。AIと一緒にやっている場合は、まとめを出してもらってください。
# ポストモーテム: (一言でいうと何が起きたか)
日付: / 対象: (インシデント / プロジェクト)
## 何が起きたか(時系列・事実のみ)
## 要因(複数。仕組み・プロセス・情報の届き方で書く)
## うまくいったこと(防波堤になった仕組み、早く気づけた理由)
## 変えること(1つ)
- 何を:
- いつまでに:
- いつ・何を見て効果を確かめるか:
## 学び(次に同じ状況に出会う人へ) 「うまくいったこと」を必ず書いてください。失敗だけを並べると、次からふりかえること自体が苦しくなります。防波堤になった仕組みや、早く気づけた理由は、そのまま守るべきものです。
60分以上の時間が取れるなら
ひとりで60分、90分と続けても、掘れる深さはあまり変わりません。視点が1つしかないからです。同じところを、より丁寧に見直すだけになりがちです。
時間が取れるなら、その時間を人を集めることに使ってください。30分でも人が集まれば、ひとりで90分かけるより多くの要因が見つかります。チームでやるに進め方を書いています。