POSTMORTEM 03 — ポストモーテム

ひとりでやる(30分)

人を集められないときの進め方です。30分でコンパクトに。それ以上の時間が取れるなら、その時間を使って人を集めたほうが、得るものは大きくなります。

30分後に、手元に残るもの

終わったときに、こうなっていれば成功です。

  • 何が起きたかが、時系列で書き出されている
  • 要因が、自分の落ち度ではなく仕組みの言葉で1つ以上書かれている
  • 次に変えることが1つ決まっていて、いつ・何を見て効果を確かめるかも決まっている
  • それが、あとから読み返せる場所に置かれている

逆に、「自分が悪かった。次は気をつけます」しか残っていないなら、うまくいっていません。気をつけるは、忙しくなると最初に消えます。そして次に同じ場面に立つのが別の人なら、その心がけは引き継がれません。

まず確認です。本当にひとりでやるしかないでしょうか。当時の状況を知っている人が1人でもいるなら、その人と30分話すほうが、ひとりで1時間かけるより多くのことが見えます。チームでやるも読んでみてください。

そのうえで、集められないことはあります。ひとりで受けた案件。すでに解散したチーム。聞きにくい相手。そういうとき、ポストモーテムを諦める必要はありません。

ひとりだと、なぜ自責で止まるのか

ひとりでふりかえると、たいてい「自分が悪かった、次は気をつけます」に着地します。そして、そこから動きません。

これは、性格の問題ではありません。ひとりという条件そのものの問題です。

ひとりのふりかえりには、はっきりした弱点があります。自分の視点からは出られないことです。自分が気にしていることには何度でも目が向きますが、気にしていないことは、何度ふりかえっても視界に入ってきません。

ポストモーテムでこれが起きると、どうなるか。自分の落ち度ばかりに目が向き、仕組みが視界に入りません。自分の行動は詳細に思い出せるのに、その行動を取らせた状況のほうは、背景に沈んだままになります。

テンプレートを埋めても、これは変わりません。埋める作業は整理であって、整理とは自分の中にすでにあるものを並べ替えることだからです。並べ替えても、視点は動きません。視点を動かすのは、自分の外から来る問いだけです。

くわしくは ひとりのふりかえりにAIを使っても、頭が整理されるだけで終わっていませんか に書いています。

チームが果たしていた役を、AIに頼む

チームでやるとき、他の人は4つの役を果たしています。ひとりのときは、それをAIに引き受けてもらいます。

チームが果たしていた役ひとりだとAIに頼むこと
別の視点から事実を足す自分が見た範囲しか出ない「そのとき他の人には何が見えていたと思いますか」と聞いてもらう
「なんでそう思ったの」と聞く自分の解釈を疑わない前提を掘る問いを投げてもらう
人ではなく仕組みへ引き戻す自責で止まる「仕組みとして見るとどうですか」と戻してもらう
学びを受け取る相手になる書いて終わり、読み返さないまとめを言葉にさせ、残る形にしてもらう

AIは、他の人の代わりです。他の人より優れているわけではありません。人に聞けるなら、そのほうがいい。聞けない・聞きにくいときに、対話の相手を頼んでいい。今日はそれがAIでも構いません。

30分の進め方

段は飛ばしません。飛ばすと、反省会に戻ります。

1自分を責める気持ちを、先に出しておく3分

ひとりでも、ここは省略しません。自責が強いまま進めても、結論は最初から決まってしまいます。

最初に、声に出すか書くかしてください。「そのときに分かっていたこと、自分のスキル、使えたリソース、置かれた状況を考えれば、自分はベストを尽くした」。納得できなくても構いません。いったん置いてみることが大事です。

それでも「でも自分が悪かった」という気持ちが強いなら、先にそれを全部書き出してください。抑え込むと、あとの段で何度も顔を出します。言い切ってから始めたほうが、結果的に早く進みます。

2何が起きたかを並べる8分

評価をせず、事実だけを時系列で書きます。「まずかった」「判断ミスだった」が出てきたら、それは次の段まで取っておきます。

  • いつ、何が起きましたか
  • いつ、どうやって気づきましたか
  • 気づいてから、何をしましたか
  • いつ、何をしたことで収まりましたか

ひとりのときは、ここに2つ足します。見ていなかった範囲を意識的に埋めるためです。

  • そのとき、他の人には何が見えていたと思いますか
  • 自分が見ていなかった時間帯はありますか。そこでは何が起きていたと思いますか
3なぜ起きたかを掘る8分

いちばん引っかかっているところを1つ選んで、そこを掘ります。30分では全部は掘れません。

  • 何があって、そうなったのでしょう
  • そのとき、手元にどんな情報がありましたか
  • その判断は、当時の情報で見れば妥当でしたか。妥当だったなら、問題は判断ではなく情報の届き方かもしれません
  • 他にも要因はありませんか

ここで自責が出たら、次の2つを使います。この2つが、ひとりのポストモーテムでいちばん効きます。

  • 同じ状況に別の人が入っていたら、同じことが起きたと思いますか
    → 起きるなら、それはあなたの問題ではなく仕組みの問題です
  • これを同僚から相談されたら、あなたは何と言いますか
    → 自分に厳しく他人に優しい人ほど、ここで視点が動きます
4何を変えるか決める8分

ここが本題です。「気をつける」で終わらせないこと。

  • 「自分が気をつける」以外の対策を、3つ挙げるとしたら何ですか
    → ここは粘ってください。1つだと、自責のままの結論になります
  • それは人が気をつけなくても効きますか
  • その対策は、あなたがいなくても機能しますか
  • うまくいったかどうかは、いつ・何を見れば分かりますか

やることは1つに絞ります。ひとりで3つ抱えても、実行されません。

5残す3分

書いて、読める場所に置きます。ひとりでやったとしても、次に同じ状況に出会う人(それは未来の自分かもしれません)に渡すつもりで書いてください。

  • 今回の学びを一言でいうと、何ですか
  • 今日のふりかえり自体は、どうでしたか

まとめの形

30分の終わりに、この形で書き出します。AIと一緒にやっている場合は、まとめを出してもらってください。

# ポストモーテム: (一言でいうと何が起きたか)

日付: / 対象: (インシデント / プロジェクト)

## 何が起きたか(時系列・事実のみ)

## 要因(複数。仕組み・プロセス・情報の届き方で書く)

## うまくいったこと(防波堤になった仕組み、早く気づけた理由)

## 変えること(1つ)
- 何を:
- いつまでに:
- いつ・何を見て効果を確かめるか:

## 学び(次に同じ状況に出会う人へ)

「うまくいったこと」を必ず書いてください。失敗だけを並べると、次からふりかえること自体が苦しくなります。防波堤になった仕組みや、早く気づけた理由は、そのまま守るべきものです。

60分以上の時間が取れるなら

ひとりで60分、90分と続けても、掘れる深さはあまり変わりません。視点が1つしかないからです。同じところを、より丁寧に見直すだけになりがちです。

時間が取れるなら、その時間を人を集めることに使ってください。30分でも人が集まれば、ひとりで90分かけるより多くの要因が見つかります。チームでやるに進め方を書いています。

AIと一緒にポストモーテムをする

ふりかえりコーチ(SkillとGem)に、このページの進め方が入っています。「先週の障害のポストモーテムをしたい」と話しかけると、問診から伴走します。ひとりだと伝えれば、他の人の視点の役を引き受けます。