終わったときに、手元に残るもの
ゴールは、集まって話すことではありません。次に同じことを起こさないための変更が決まり、それが読める形で残っていることです。
- 何が起きたかについて、参加者の認識が揃っている(見ていた景色の違いが埋まっている)
- 要因が複数出ていて、どれも人ではなく仕組みの言葉で書かれている
- 変えることが3つまでに絞られ、誰が・いつまでに・いつ何を見て確かめるかが決まっている
- うまくいったことも書かれている
- それが文書になっていて、その場にいなかった人も読める場所にある
会議が終わった時点で議事録しか残っていないなら、まだ半分です。成果物は文書で、その文書が読まれてはじめて学びになります。
集める人と、集め方
- その場にいた人を必ず。いちばん詳しく知っているのは、対応にあたった人です
- 見ていた角度が違う人を。気づいた人、連絡を受けた人、影響を受けた側。角度が増えるほど事実が揃います
- 評価する立場の人をどうするか、先に決める。上長が同席すると発言が慎重になることがあります。同席してもらうなら、冒頭で「評価には使わない」とその人自身の口から言ってもらってください
人数は4〜8人くらいがやりやすい規模です。それ以上になると、全員が話す時間が取れません。多いときは、事実を集める段だけ全員、掘る段からは絞る、という分け方もあります。
時間配分
段は飛ばさず、それぞれを短くして収めます。目的によって重心を変えてください。
| 段 | 60分 | 90分 |
|---|---|---|
| 1 場をつくる | 8分 | 10分 |
| 2 何が起きたかを並べる | 15分 | 25分 |
| 3 なぜ起きたかを掘る | 15分 | 25分 |
| 4 何を変えるか決める | 15分 | 20分 |
| 5 学びを残す | 7分 | 10分 |
今日いちばん知りたいことが決まっているなら、その段を5〜10分厚くして、他から借りてください。原因を掘りたいなら段3を、対策を決めたいなら段4を厚くします。
ここを省略すると、ほぼ確実に反省会になります。形式的に見えても、必ずやってください。
最優先指令を、誰かに読み上げてもらいます。黙読ではなく、声に出すことに意味があります。
どんな結果であろうと、そのときに分かっていたこと、各自のスキルと能力、利用可能なリソース、置かれた状況を鑑みれば、全員がベストを尽くした。私たちはそう信じ、心から理解する。
そのうえで、この場の約束を言葉にします。
- 犯人を探す場ではない。探すのは、次に同じことを起こさないための変えどころ
- ここで話したことを、人事評価や責任追及に使わない
- 分からないことは「分からない」と言ってよい
- 今日の目的は何か(分析 / 原因 / 対策 / 学び のどれを重くするか)を全員で確認する
この段では、解釈と評価をしません。事実だけを時系列に並べます。「まずかった」「判断ミスだった」が出てきたら、「その評価は次の段で扱います。まず何が起きたかだけ」と戻してください。
付箋やオンラインボードに、1人ずつ書いて貼っていきます。同じ出来事でも、人によって書く内容が違います。その違いが、この段のいちばんの収穫です。
インシデントのときに聞くこと:
- いつ、何が起きましたか
- 誰が、いつ、どうやって気づきましたか
- 気づいてから、何をしましたか
- いつ、何をしたことで収まりましたか
プロジェクト終了のときに聞くこと:
- 始まったときの前提は何でしたか。何を作る約束でしたか
- 予定と実際がずれ始めたのは、いつですか
- 山場はどこでしたか。いちばんしんどかったのはいつですか
- うまくいったのはどこですか(必ず聞く。失敗だけを並べさせない)
関連手法:タイムライン
並べた事実の中から、いちばん引っかかっているところを選んで掘ります。全部は掘れません。
掘り方のルールは3つです。
- 一段掘るごとに「他にも要因はありませんか」と枝を広げる(一本道にしない)
- 「なぜ」ではなく「何があって」で聞く
- 人の性質(注意不足・意識が低い)に着地したら、掘り方が間違っている合図。もう一段、仕組みへ降ろす
インシデントのとき:
- 何があって、そうなったのでしょう
- そのとき、手元にどんな情報がありましたか
- もっと早く気づける場所はありましたか。そこに気づく仕掛けはありましたか
- これを防いでいた仕組みは何かありましたか。それはなぜ効かなかったのでしょう
- 同じことが、別のところでも起きうると思いますか
プロジェクト終了のときは、扱うのが「あのときの判断」になります。後知恵で裁かないことが特に大事です。
- 分かれ道だったのは、どこだと思いますか
- その判断をしたとき、手元にどんな情報がありましたか
- いま同じ情報量で同じ状況に立ったら、同じ判断をしますか
→ 「する」なら判断は妥当で、問題は情報の集め方や届き方にあります - 見積もりと実際の差は、どこから来ましたか
- うまくいったほうは、なぜうまくいったと思いますか(成功も掘る)
誰が・いつまでに・どうやって測るか。ここまで決めて、はじめて対策です。
- 変えられるとしたら、どこですか(仕組み・プロセス・道具のどれか)
- それは人が気をつけなくても効きますか → 効かないなら、まだ人に着地しています
- 誰が、いつまでにやりますか
- うまくいったかどうかは、いつ・何を見れば分かりますか
- もしうまくいかなかったら、元に戻せますか
対策が10個も20個も出たときは、こう言ってください。「全部はできません。次の1か月で本当にやるものを、多くても3つ選びましょう。残りは書き残して、また次のときに」。
関連手法:SMARTな目標/アクションプランづくり
その場にいた人だけが賢くなっても、組織は同じ失敗を繰り返します。読める場所に置いて、はじめて学びになります。
- 今回の学びを一言でいうと、何ですか
- これを他のチームにも伝えるとしたら、どこが役に立ちそうですか
- 次に同じ状況に出会う人が読んで助かるとしたら、何を書き残しますか
最後に、ふりかえりのふりかえりを一言。「今日の進め方はどうでしたか。やりにくかったところはありましたか」。次回の進め方が良くなります。
まとめの形
会議をして終わり、にしないでください。成果物は文書です。
# ポストモーテム: (一言でいうと何が起きたか)
日付: / 対象: (インシデント / プロジェクト) / 参加: N名
## 何が起きたか(時系列・事実のみ)
## 影響(誰に・どれくらい・どれくらいの時間)
## 気づきと対応
- 気づいた時刻と、きっかけ:
- 収束までにやったこと:
## 要因(複数)
- 要因1:
- 要因2:
## うまくいったこと
## これから変えること
| 変えること | 誰が | いつまでに | いつ・何を見て確かめるか |
|---|---|---|---|
## 学び(次に同じ状況に出会う人へ) 書くときの決まりが3つあります。
- 個人名を書かない。役割や工程で書きます(「レビュー担当のAさんが」ではなく「レビューの工程で」)
- うまくいったことを必ず入れる。失敗だけ並べる文書は、次から誰も本当のことを書かなくなります
- 読める場所に置く。書いたまま個人のフォルダに眠っているなら、書かなかったのとほとんど同じです
やるかどうかで、毎回もめないために
「これはポストモーテムをやるほどのことか」を都度議論していると、判断そのものが感情的な話になります。基準を先に決めておいてください。
たとえば、ユーザーに影響が出た。データが失われた。オンコール対応が必要になった。復旧に一定時間以上かかった。こうした条件を先に決めておけば、起きたときに迷いません。