POSTMORTEM 04 — ポストモーテム

チームでやる(60〜90分)

これが本来の形です。60分以上の時間が取れるなら、迷わずこちらを選んでください。見ていた景色が人によって違う。それが揃うだけで、ひとりでは辿りつけない要因が見つかります。

終わったときに、手元に残るもの

ゴールは、集まって話すことではありません。次に同じことを起こさないための変更が決まり、それが読める形で残っていることです。

  • 何が起きたかについて、参加者の認識が揃っている(見ていた景色の違いが埋まっている)
  • 要因が複数出ていて、どれも人ではなく仕組みの言葉で書かれている
  • 変えることが3つまでに絞られ、誰が・いつまでに・いつ何を見て確かめるかが決まっている
  • うまくいったことも書かれている
  • それが文書になっていて、その場にいなかった人も読める場所にある

会議が終わった時点で議事録しか残っていないなら、まだ半分です。成果物は文書で、その文書が読まれてはじめて学びになります。

集める人と、集め方

  • その場にいた人を必ず。いちばん詳しく知っているのは、対応にあたった人です
  • 見ていた角度が違う人を。気づいた人、連絡を受けた人、影響を受けた側。角度が増えるほど事実が揃います
  • 評価する立場の人をどうするか、先に決める。上長が同席すると発言が慎重になることがあります。同席してもらうなら、冒頭で「評価には使わない」とその人自身の口から言ってもらってください

人数は4〜8人くらいがやりやすい規模です。それ以上になると、全員が話す時間が取れません。多いときは、事実を集める段だけ全員、掘る段からは絞る、という分け方もあります。

時間配分

段は飛ばさず、それぞれを短くして収めます。目的によって重心を変えてください。

60分90分
1 場をつくる8分10分
2 何が起きたかを並べる15分25分
3 なぜ起きたかを掘る15分25分
4 何を変えるか決める15分20分
5 学びを残す7分10分

今日いちばん知りたいことが決まっているなら、その段を5〜10分厚くして、他から借りてください。原因を掘りたいなら段3を、対策を決めたいなら段4を厚くします。

1場をつくる8〜10分

ここを省略すると、ほぼ確実に反省会になります。形式的に見えても、必ずやってください。

最優先指令を、誰かに読み上げてもらいます。黙読ではなく、声に出すことに意味があります。

どんな結果であろうと、そのときに分かっていたこと、各自のスキルと能力、利用可能なリソース、置かれた状況を鑑みれば、全員がベストを尽くした。私たちはそう信じ、心から理解する。

Norm Kerthの最優先指令

そのうえで、この場の約束を言葉にします。

  • 犯人を探す場ではない。探すのは、次に同じことを起こさないための変えどころ
  • ここで話したことを、人事評価や責任追及に使わない
  • 分からないことは「分からない」と言ってよい
  • 今日の目的は何か(分析 / 原因 / 対策 / 学び のどれを重くするか)を全員で確認する
2何が起きたかを並べる15〜25分

この段では、解釈と評価をしません。事実だけを時系列に並べます。「まずかった」「判断ミスだった」が出てきたら、「その評価は次の段で扱います。まず何が起きたかだけ」と戻してください。

付箋やオンラインボードに、1人ずつ書いて貼っていきます。同じ出来事でも、人によって書く内容が違います。その違いが、この段のいちばんの収穫です。

インシデントのときに聞くこと:

  • いつ、何が起きましたか
  • 誰が、いつ、どうやって気づきましたか
  • 気づいてから、何をしましたか
  • いつ、何をしたことで収まりましたか

プロジェクト終了のときに聞くこと:

  • 始まったときの前提は何でしたか。何を作る約束でしたか
  • 予定と実際がずれ始めたのは、いつですか
  • 山場はどこでしたか。いちばんしんどかったのはいつですか
  • うまくいったのはどこですか(必ず聞く。失敗だけを並べさせない)

関連手法:タイムライン

3なぜ起きたかを掘る15〜25分

並べた事実の中から、いちばん引っかかっているところを選んで掘ります。全部は掘れません。

掘り方のルールは3つです。

  • 一段掘るごとに「他にも要因はありませんか」と枝を広げる(一本道にしない)
  • 「なぜ」ではなく「何があって」で聞く
  • 人の性質(注意不足・意識が低い)に着地したら、掘り方が間違っている合図。もう一段、仕組みへ降ろす

インシデントのとき

  • 何があって、そうなったのでしょう
  • そのとき、手元にどんな情報がありましたか
  • もっと早く気づける場所はありましたか。そこに気づく仕掛けはありましたか
  • これを防いでいた仕組みは何かありましたか。それはなぜ効かなかったのでしょう
  • 同じことが、別のところでも起きうると思いますか

プロジェクト終了のときは、扱うのが「あのときの判断」になります。後知恵で裁かないことが特に大事です。

  • 分かれ道だったのは、どこだと思いますか
  • その判断をしたとき、手元にどんな情報がありましたか
  • いま同じ情報量で同じ状況に立ったら、同じ判断をしますか
    → 「する」なら判断は妥当で、問題は情報の集め方や届き方にあります
  • 見積もりと実際の差は、どこから来ましたか
  • うまくいったほうは、なぜうまくいったと思いますか(成功も掘る)

関連手法:5つのなぜ(一本道で終えないこと)/力の場の分析

4何を変えるか決める15〜20分

誰が・いつまでに・どうやって測るか。ここまで決めて、はじめて対策です。

  • 変えられるとしたら、どこですか(仕組み・プロセス・道具のどれか)
  • それは人が気をつけなくても効きますか → 効かないなら、まだ人に着地しています
  • 誰が、いつまでにやりますか
  • うまくいったかどうかは、いつ・何を見れば分かりますか
  • もしうまくいかなかったら、元に戻せますか

対策が10個も20個も出たときは、こう言ってください。「全部はできません。次の1か月で本当にやるものを、多くても3つ選びましょう。残りは書き残して、また次のときに」。

関連手法:SMARTな目標アクションプランづくり

5学びを残す7〜10分

その場にいた人だけが賢くなっても、組織は同じ失敗を繰り返します。読める場所に置いて、はじめて学びになります。

  • 今回の学びを一言でいうと、何ですか
  • これを他のチームにも伝えるとしたら、どこが役に立ちそうですか
  • 次に同じ状況に出会う人が読んで助かるとしたら、何を書き残しますか

最後に、ふりかえりのふりかえりを一言。「今日の進め方はどうでしたか。やりにくかったところはありましたか」。次回の進め方が良くなります。

まとめの形

会議をして終わり、にしないでください。成果物は文書です。

# ポストモーテム: (一言でいうと何が起きたか)

日付: / 対象: (インシデント / プロジェクト) / 参加: N名

## 何が起きたか(時系列・事実のみ)

## 影響(誰に・どれくらい・どれくらいの時間)

## 気づきと対応
- 気づいた時刻と、きっかけ:
- 収束までにやったこと:

## 要因(複数)
- 要因1:
- 要因2:

## うまくいったこと

## これから変えること
| 変えること | 誰が | いつまでに | いつ・何を見て確かめるか |
|---|---|---|---|

## 学び(次に同じ状況に出会う人へ)

書くときの決まりが3つあります。

  • 個人名を書かない。役割や工程で書きます(「レビュー担当のAさんが」ではなく「レビューの工程で」)
  • うまくいったことを必ず入れる。失敗だけ並べる文書は、次から誰も本当のことを書かなくなります
  • 読める場所に置く。書いたまま個人のフォルダに眠っているなら、書かなかったのとほとんど同じです

やるかどうかで、毎回もめないために

「これはポストモーテムをやるほどのことか」を都度議論していると、判断そのものが感情的な話になります。基準を先に決めておいてください。

たとえば、ユーザーに影響が出た。データが失われた。オンコール対応が必要になった。復旧に一定時間以上かかった。こうした条件を先に決めておけば、起きたときに迷いません。

AIと一緒にポストモーテムをする

ふりかえりコーチ(SkillとGem)に、このページの進め方が入っています。「先週の障害のポストモーテムをしたい」と話しかけると、問診から伴走します。ひとりだと伝えれば、他の人の視点の役を引き受けます。