POSTMORTEM 05 — ポストモーテム

落とし穴と、そのときの一手

ポストモーテムは、だいたい同じところで詰まります。見分け方と、その場で言える言葉をまとめました。進行役の手元に置いておくと、崩れかけたときに戻せます。

どれも、悪意があって起きることではありません。放っておくとそちらへ流れる、というだけです。気づいて言い直せば、場は戻ります。

01 反省会になっている

こうなっていたら「すみません」「私の責任です」が繰り返される

謝罪が始まると、その人は自分を守るために話を短くします。いちばん詳しく知っている人から、いちばん情報が出てこなくなります。

そのまま言えます「責任の話は、いったん置きます。いま探したいのは、次に同じことが起きない形です」

場の最初で宣言していても、途中で崩れることがあります。崩れたら、その場で言い直してください。言い直すのは何度でも構いません。

02 人に着地している

こうなっていたら対策が「気をつける」「意識する」「周知徹底」

心がけは、忙しくなると最初に消えます。そして同じ場面に立つのが別の人なら、その心がけは引き継がれません。

そのまま言えます「気をつけなくても防げる形には、できませんか」

仕組み・プロセス・道具のどれかを変えられないか探します。自動化する、手順から消す、気づける通知を足す、そもそもその作業をなくす。どれも無理なら、せめて「気をつけるべき瞬間」を仕組みで知らせる形にできないか考えます。

03 一本道で終わっている

こうなっていたら要因が1つだけ出て、そこで終わっている

5回「なぜ」を繰り返すと、きれいな因果の鎖ができあがります。ただそれは、いくつもある道のうち1本をなぞっただけかもしれません。

そのまま言えます「他にも要因はありませんか」「これが無かったら、本当に防げましたか」

最後の問いが効きます。「防げなかった」なら、他に要因があるということです。一段ずつ枝を広げていくと、単独では小さな要因がいくつも重なっていたことが見えてきます。

04 問いが人に向いている

こうなっていたら「なぜ確認しなかったのか」と聞いている

「なぜ」は帰属を招きます。問いを重ねるほど答えは人の内面に近づき、最後は「誰が」に行き着きます。

そのまま言えます「何があって、確認できなかったのでしょう」

「なぜ」を「何があって」に変えるだけで、返ってくる答えが変わります。通知が別の場所に流れていた、手順書が2つあった、前日から対応が続いていた。どれも変えられるものです。考え方はなぜ反省会になってしまうのかに書いています。

05 人の性質に着地した

こうなっていたら掘った答えが「注意不足だった」「意識が低かった」

ここで止まると、対策は「気をつける」にしかなりません。注意不足は結果であって、原因ではありません。

そのまま言えます「同じ状況に別の人が入っていたら、同じことが起きたと思いますか」

「起きたと思う」なら、個人ではなく仕組みの問題です。ここから、注意しなくても済む形を探しにいきます。

06 自責で止まっている

こうなっていたらひとりで掘っていて「自分が悪かった」で終わる

ひとりだと視点が動きません。自分の落ち度は詳細に見えるのに、その行動を取らせた状況は背景に沈んだままになります。

そのまま言えます「これを同僚から相談されたら、自分は何と言うだろう」

自分に厳しく他人に優しい人ほど、この問いで視点が動きます。あわせて「自分が気をつける以外の対策を3つ」も試してください。1つでは、自責のままの結論になります。くわしくはひとりでやるへ。

07 後知恵で裁いている

こうなっていたらいま分かっていることで、当時の判断を評価している

結果を知ってから見れば、どんな判断にも穴が見えます。けれど当時は、その情報はありませんでした。

そのまま言えます「その判断をしたとき、手元にどんな情報がありましたか」

先にこれを聞いてから、判断の話に入ります。「当時の情報なら妥当だった」となれば、変えるべきは判断ではなく、情報の集め方や届き方です。

08 事実が薄い

こうなっていたら時系列が2〜3行で終わってしまう

事実が薄いまま原因の話に入ると、憶測で埋めることになります。そして憶測は、たいてい人に向かいます。

そのまま言えます「その前は、何をしていましたか」「そのとき、誰が何をしていましたか」

前後に広げると出てきます。ひとりのときは「他の人には何が見えていたと思うか」「自分が見ていなかった時間帯はどこか」も足してください。

09 対策が多すぎる

こうなっていたら対策が10個も20個も並んでいる

全部やろうとすると、どれも中途半端に終わります。そして次のふりかえりで「前回の対策、やってないね」という話になります。

そのまま言えます「次の1か月で本当にやるものを、多くても3つ選びましょう」

残りは消さずに書き残します。次のときに、また候補として見ればいい。選ばなかったこと自体も記録です。

10 測り方がない

こうなっていたら対策は決まったが、確かめ方が決まっていない

いつ何を見るか決めていないと、やったかどうかすら後から分かりません。効果の話もできません。

そのまま言えます「うまくいったかどうかは、いつ・何を見れば分かりますか」

「1か月後に、同じ種類の問い合わせが減っているか見る」くらいで構いません。日付と、見るものが決まっていれば十分です。

11 感情が動いている

こうなっていたら怒り・悔しさ・落ち込みが強く出ている

感情を抑え込ませると、その人は話すのをやめます。そして抑え込んだ分は、あとの段で何度も顔を出します。

そのまま言えます「それだけ本気でやっていた、ということですね」

止めずに、まず聞きます。受け止めてから事実に戻ると、進みが早くなります。ひとりのときも同じで、先に全部書き出してから始めてください。

12 話したくなさそう

こうなっていたら返答が短い。曖昧にぼかされる

まだ安全だと感じられていないか、話せない事情があります。深追いすると、次から参加してもらえなくなります。

そのまま言えます「話せる範囲で大丈夫です」

無理に引き出さず、書ける部分だけで進めます。場の約束(評価に使わない)をもう一度確認するのも手です。それでも出てこないなら、今日はそこまでと割り切ってください。

崩れたら、何度でも言い直す

場の約束は、最初に宣言しても途中で崩れます。崩れること自体は失敗ではありません。気づいて言い直せるかどうかが、進行役の仕事です。

「いま、犯人さがしになりかけていました。戻しましょう」と言ってしまって構いません。それを口に出せる場であることが、そのまま安全さの証明になります。

AIに進行役をやってもらうときは

ふりかえりコーチ(SkillとGem)には、ここに書いた詰まりと一手が入っています。対話の途中で人に着地しかけたら、仕組みへ戻す問いを返します。ひとりでやるときは、ひとりでやるもあわせてどうぞ。

AIと一緒にポストモーテムをする

ふりかえりコーチ(SkillとGem)に、このページの進め方が入っています。「先週の障害のポストモーテムをしたい」と話しかけると、問診から伴走します。ひとりだと伝えれば、他の人の視点の役を引き受けます。