ふりかえりのアクティビティ紹介:SMART Goals
2026-08-17 ・ 元記事: Qiita
「意識します」で終わっていませんか
ふりかえりの最後に決めたアクションが、「誤字脱字に気をつける」「コミュニケーションを意識する」。そして次のふりかえりで「そういえば、あれどうなったっけ……」。心当たりはないでしょうか。
「意識する」「注意する」「頑張る」「なんとかする」といった心の持ちようでカイゼンしようとするのは、実行されないアクションの典型です。今回紹介するSMART Goalsは、アクションを「確実に実行される」と確信できるところまで具体化する手法です。
SMARTとは
SMARTは、次の頭文字をとったフレームワークです。
- Specific(明確な・具体的な)
- Measurable(計測可能な)
- Attainable(達成可能な)
- Relevant(適切な・問題に関連のある)
- Timely / Time-bound(すぐにできる・期限の決まった)
次に実行するアクションを、SMARTのうち多くの項目を満たすように具体化していきます。具体化されたアクションは効果の予測がしやすく、不備も見つけやすくなります。不備が見つかればすぐ軌道修正できますし、実行された結果が成功でも失敗でも、次に活かせます。つまり、経験学習のサイクルが回りやすくなるのです。
SMARTでない例と、SMARTな例
SMARTでないアクションの例:「Aさんの設計が、誤字脱字のミスが多く手戻りしてしまったので、誤字脱字をしないように意識する」
「誤字脱字をしないよう」は具体的な行動になっておらず、「意識する」はどうやったら達成できたと言えるのかわかりません。
SMARTなアクションの例:「Aさんの設計が、誤字脱字のミスが多く手戻りしてしまったので、チーム全員が相互に設計をレビューしあう仕組みをつくる。まずは、今週に設計書X, Yのレビュータスクが発生するので、XはAさん・Bさんが、YはCさん・Dさんが相互にレビューしあい、指摘数を数える。指摘数や内容を次回の定例会でチーム全体に共有し、そのときに再度カイゼン案を検討する」
どこがSMARTになっているかを分解すると、こうなります。問題に関連のある対応策を練り(Relevant)、今週発生するタスクを対象にしていて(Timely)、誰が何をするか・何を数えるかが一目でわかり(Specific・Measurable・Attainable)、次回の定例会という期限で共有し(Time-bound)、うまくいくか不確実なことを見越して次のカイゼン検討まで組み込まれています。
進め方
所要時間は、ひとりなら5〜10分程度。複数人の場合は最大5名程度のグループに分かれて、5〜20分でアクションの作成と共有を行います。慣れていないチームには、SMARTの意味と例を書いたホワイトボードやスライドを事前に用意しておきましょう。
慣れないうちは、アクションの候補を先に出してから、SMARTになるよう肉付けしていきます。1グループで行う場合は、話し合ったあとに「こういう場合はどうする?」「どうなったらアクションができたと判断できる?」とお互いに質問しあって、SMARTになっているかを検査します。複数グループで行う場合は、グループごとに考えたアクションを共有し、SMARTになっているかを確認しあい、全員が「実行できる」と確信を持てたものを次のアクションとして採用します。
チームが慣れてきたら、アクション候補を出す時点で「SMARTにアイデアを出しましょう」と伝えるだけで、最初から具体的な案が出てくるようになります。
ファシリテーションのポイント
SMARTは指針であって、チェックリストではありません。「S=これ、M=これ」と項目を個別に埋めていくと、歪なアクションができあがりがちです。あくまで全体として実行できそうかを見ましょう。
大きすぎる課題を選ばない。手の出しようがない課題を選んでしまうと、具体化の途中で行き詰まります。その場合は「問題を切り崩す第一歩として何をするか」を考え、アクションの候補から選び直しましょう。
慣れるまでは時間を多めに。導入して2〜6回程度は、想定より時間がかかります。最初から完璧にSMARTなアクションを出すのは困難です。ふりかえりの結果が徐々にSMARTになっていく様子が確認できれば、それで十分と考えて次へ進みましょう。
出典
この内容はふりかえり読本 学び編の3章で紹介しています。原典はEsther Derby・Diana Larsen著『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』(角征典 訳、オーム社、2007)で、こちらを参考にファシリテーションテクニック等を汎化したものです。