← ふりかえり実践コース

PRACTICE — LESSON 4 / 12

もう一度、同じふりかえりを 〜ふりかえりのふりかえり〜

今週のゴール目安 約36分

1回目のふりかえりを5つの観点でふりかえり、改善点を反映した2回目のKPTを回せる

なぜ「もう一度」なのか

今週は、新しい型に進みません。前回とまったく同じ構成、DPA→KPT→+/Δの90分を、もう一度やります。物足りなく感じるかもしれませんが、この1回が、このコースでいちばん実践的な1回です。理由は3つあります。

第一に、1回目は、必ずぎこちないからです。初めての進行、初めての手法、初めての沈黙。前回のあなたは、90分の大半を「次は何をするんだっけ」に使っていたはずです。それが普通です。第二に、手法の実力は2回目から出るからです。チームも進行も勝手が分かった2回目は、同じ90分から出てくる意見の量も深さも別物になります。1回やって「うちには合わない」と判定するのは、自転車に1回乗って「乗れない乗り物だ」と言うのに似ています。第三に、毎週違う手法を覚えるのは、実際しんどいからです。このコースはレッスン5から型を1つずつ紹介していきますが、現実の運用では、1つの型を2〜3回繰り返してから次へ進むくらいがちょうどいい。今週はその「繰り返し方」を学びます。同じことをただ繰り返すのではなく、1回目をふりかえって、2回目を良くする。ふりかえりが上手くなる人とそうでない人の差は、手法の知識ではなく、この習慣にあります。

まず、1回目をふりかえる。観点は5つ

材料は2つあります。前回の終わりに撮ったボードの写真と、+/Δの結果です。それを手元に置いて、5つの観点で1回目を眺め直してください。ひとりで10分あればできます。5つを均等に点検する必要はありません。上から順に眺めて、「あ、ここだ」と胸がちくりとした観点で立ち止まる。その直感は、たいてい当たっています。

1回目のふりかえりを見直す5つの観点。①場:安心して話せたか、②時間:どこが押したか、③問い:どの問いで手が動いたか、④参加:全員の声が出たか、⑤アクション:Tryは動いているか

①場。安心して話せていたか
笑いはあったか。付箋に本音が書かれていたか。見分けるサインは、雑談のときと本編のときの声のトーンの差です。本編に入った途端に敬語が固くなり、発言前に誰かの顔色を見る動きがあったなら、場の温度がまだ足りません。手当てはDPAの作り直しと、あなた自身が先に小さな失敗談を1枚出すこと。呼び水はいつも進行席から注ぎます。逆に、笑いが多くて付箋も遠慮なく出ていたなら、場作りは合格です。DPAのルールのどれが効いたのかを覚えておくと、この先ずっと使える武器になります。

②時間。どこが押して、どこが余ったか
ほぼ確実に、共有が押したはずです。押した場所を責める必要はありません。知りたいのはあなたのチームの癖です。出来事の共有で盛り上がるチーム、Problemで議論が始まってしまうチーム、癖はそれぞれです。癖が分かれば、2回目はそこに時間を多めに割り当てるか、切り上げのセリフを準備しておくかを選べます。

③問い。どの問いで手が動いたか
「続けたいことは?」でペンが走ったか、止まったか。止まった問いは、悪い問いなのではなく、あなたのチームには大きすぎた問いです。2回目は問いを小さく割るか、例を2つ添えて出します。「たとえば『朝会の共有が分かりやすかった』とか『金曜のリリース、段取りが良かった』とか、そのレベルでいいです」。例の力は絶大です。もうひとつの見どころは、問いの順番です。KPTの出来事→Keep→Problem→Tryという順番自体が、実は問いの階段になっています。事実→良い面→課題→未来。この階段を崩さず登れたか、途中で段を飛ばした場面はなかったかも、写真から読み取れます。

④参加。全員の声が場に出たか
写真の付箋の枚数を、ざっくり人数で割ってみてください。書いた量に極端な偏りはなかったか。共有のとき、話していない人はいなかったか。そして忘れがちなもうひとり、あなた自身は喋りすぎなかったか。ファシリテーターの発話量が一番多かったなら、2回目は問いを投げたあとに3秒長く待つ、を試してください。

⑤アクション。決めたTryは、動いているか
前回決めたアクションは、実行されましたか。されていないなら、原因はほぼ3つです。大きすぎた、曖昧だった、思い出すきっかけがなかった。責める話ではなく、Tryの設計へのフィードバックです。2回目はもっと小さく、もっと具体的に、もっと目に入る場所へ。

ここでひとつ、大事な注意があります。自分の目だけを信じないでください。進行席から見えた景色と、参加席から見えた景色は、しばしば別物です。あなたが「今日は固かったな」と感じた回を、メンバーは「じっくり考えられて良かった」と感じていることもあれば、その逆もあります。だから5つの観点のうち、気になったものを1つ選んで、チームに直接聞いてみるのがおすすめです。大げさな場は要りません。ふりかえりの帰り際やチャットで、「そういえば先週、書く時間って長すぎました?短すぎました?」と1人にでも聞けば十分です。ファシリテーションの答え合わせの相手は、いつだって参加者です。

5つ全部が良かった、はまず起きません。それでいいのです。気になった観点を1つか2つ選んでください。それが2回目の改善テーマになります。全部を一度に直そうとしないのは、チームのアクションと同じです。

あなた自身の、3行の進行ログ

チームのふりかえりとは別に、ファシリテーターであるあなた個人の記録も、今週から始めることをおすすめします。といっても日報のような重いものではありません。ふりかえりが終わった直後の5分で書く、3行のログです。1行目、うまくいった問いかけ・進行。「例を2つ添えたらペンが走った」。2行目、困った瞬間。「Problemの共有で議論が始まって切れなかった」。3行目、次に試すこと。「議論はTryの時間で、と最初に予告する」。

たった3行ですが、これはあなた専用の教科書になります。困った瞬間は、本に載っている一般論より、あなたのチームで実際に起きたことの方がずっと再現性が高い。5回分たまった頃に読み返すと、自分の progress と癖が驚くほどはっきり見えます。このコースのファシリテーター向け編でも詳しく扱う習慣ですが、始めるのは早いほど得です。書く場所は手帳でもメモアプリでも、チームに見せる必要はありません。

+/Δの読み方。Δはアジェンダへの注文書

チームがくれた+/Δは、宝の地図です。読み方のコツは、Δを「次回のアジェンダへの注文書」に翻訳すること。実例で見ましょう。

「出来事を書く時間が足りなかった(Δ)」→ 2回目は出来事の書く時間を5分から8分に。共有をラウンドロビン1周きっかりで切る。「Problemの話が重かった(Δ)」→ Keepの共有をもう少し味わってから進む。Tryの時間に「Keepを伸ばす案も歓迎です」を強めに言う。「最後バタバタした(Δ)」→ Tryの投票を2分早める。+/Δ自体は削らない。

翻訳できないΔもあります。「なんとなく疲れた」のような感想です。捨てないでください。①場か②時間の観点に振り分けて、開催時間帯を変える・休憩を1分挟むなどの実験材料にします。そして+も忘れずに読むこと。「投票が楽しかった(+)」は「投票は残せ」という指示です。Δだけ読んで+を落とすと、良かった部分まで作り替えてしまう事故が起きます。カイゼンとは、変えることと守ることを選び分ける作業です。

2回目のアジェンダを作る

改善テーマが決まったら、アジェンダに反映します。前回と同じリンクから始めましょう。

▶ 前回と同じ構成で「ふりかえりを作る」を開く

開いたら、今回は3つの調整を体験してください。ツールを使い込む練習も兼ねています。

第一に、時間の器を見直す。90分が長すぎた・短すぎたと感じたなら、上部の時間を変えて、配分が組み替わるのを確認します。第二に、問いを1つ足す。手が動かなかったステップのKPTカードの下から、問いカタログの問いを選んで加えてみてください。たとえば出来事の書き出しに「感情が動いた瞬間はいつでしたか?」を1つ足すだけで、事実の羅列に体温が入ります。追加した問いはアジェンダにそのまま印字されるので、当日は読み上げるだけです。第三に、チーム名・日付を入れて共有リンクを貼り直す。前回のリンクを使い回さず、2回目用のアジェンダとして配り直すのがおすすめです。「前回の+/Δを反映して、ここを変えました」と一言添えれば、それ自体が「意見は使われる」という何よりのメッセージになります。

調整したアジェンダは、前回と同じチャットのスレッドに貼るのがおすすめです。1回目のアジェンダ・ボードの写真・2回目のアジェンダが1本のスレッドに並ぶと、それだけでチームのふりかえりの歴史書になります。数ヶ月後にこのスレッドを遡ると、アジェンダが少しずつ形を変え、付箋が増え、チームの型が育っていく様子が一望できます。記録は凝らなくていい。同じ場所に置き続けることだけが大事です。

DPAは今回、作り直しません。冒頭に貼ってあるルールを全員で読み上げる1分に短縮します。浮いた9分は、①〜⑤で選んだ改善テーマに配ってください。

2回目の当日、前回と変えること

進行の台本は前回とほぼ同じです。差分は3つだけ。

差分1。冒頭1分、前回のTryから始める。ルールの読み上げの直後、本編に入る前に、これを聞いてください。

「先週決めた『朝会でレビュー当番をじゃんけん』、やってみて何が起きました?」

聞くのは実行の有無ではなく、やってみて何が起きたかです。できなかった場合も「できなかったことから、何が分かります?」と続けます。この1分があるだけで、ふりかえりは毎回リセットされる単発イベントから、先週と今週がつながった継続する物語に変わります。実行できなかった報告が来たときの実況も、ひとつ載せておきます。「じゃんけん、水曜から忘れちゃいました」「教えてくれてありがとうございます。忘れた、ということは、思い出すきっかけがなかったんですね。朝会のボードに書いておくのはどうでしょう」。責めずに、設計の話に変換する。この返し方を一度見せておくと、チームは安心して「できませんでした」を報告できるようになります。報告が来なくなることこそ、いちばんの失敗です。

差分2。出来事に、前回のTryの結果を入れる。出来事の書き出しのとき、「先週のTryをやってみた話も、出来事として書いてください」と添えます。アクションの結果が出来事としてボードに載ると、KeepにもProblemにも自然に反映されます。うまくいったなら今週のKeepに、いかなかったなら今週のProblemに。カイゼンのサイクルがボードの上で一周する瞬間です。

差分3。あなたの改善テーマを、こっそり1つ実行する。3秒長く待つ、例を2つ添える、切り上げのセリフを使う。選んだ改善を、宣言せずに実行してください。そして最後の+/Δのとき、「今日、進行で1つ変えたところがあったんですが、気づきました?」と聞いてみるのも一興です。気づかれていたら大成功、気づかれていなくても、+/Δの意見であなたの実験の効き目が分かります。

もうひとつ、締めにおすすめの小さな儀式があります。+/Δのあと、解散前に10点満点を聞くことです。「今日のふりかえり、10点満点で何点でしたか。せーの、で指で出してください」。点数そのものより、続けて聞く一言に価値があります。「あと1点上げるには、何があればいいですか?」。この問いの答えは、そのまま3回目のΔになります。

2回目に、ありがちなこと

慣れて、雑になる。2回目は進行が滑らかになるぶん、書く時間を「もういいかな」と早めに切りたくなります。切らないでください。滑らかさと深さは別物です。同じProblemがまた出る。「先週も出たレビュー待ち、また出ましたね」。がっかりする場面ではありません。1回のアクションで消える問題の方が少数派です。同じ問題が出続けるのは、チームがその問題を手放していない証拠であり、2回分の材料が溜まったということです。3回続けて出たら、その問題は第6週で学ぶ「掘り下げ」の出番です。逆に、意見が減る。1回目に溜まっていた分を出しきったチームは、2回目が静かになることがあります。異常ではなく、平常運転の始まりです。1週間分の出来事から出る意見の量は、本来これくらい。少ない意見を深く話す回にしましょう。そして、時間が余る。進行が滑らかになった2回目は、90分の予定が75分で終わることがあります。無理に引き延ばさず、早じまいで構いません。「今日は15分お返しします」は、ふりかえりの評判を上げる魔法の一言です。余り続けるようなら、次回から60分に畳むか、浮いた時間をTryの具体化の問答に投資してください。具体化は、かけた時間の分だけ実行率で返してくれます。

ここまでのまとめ

実践に入る前に、ここまでの4ステップで学んだことを、ひとつずつ思い出しておきましょう。

ステップ1:なぜ「もう一度」なのか
1回目は必ずぎこちなく、手法の実力は2回目から出ます。毎週違う手法を覚えるのは実際しんどい。だから同じ型をもう一度やって、5つの観点で1回目をふりかえりました。

ステップ2:あなた自身の、3行の進行ログ
うまくいった問いかけ、困った瞬間、次に試すこと。この3行を自分用に残します。+/ΔのΔは、次回のアジェンダへの注文書として翻訳します。

ステップ3:2回目のアジェンダを作る
時間の器を見直す、問いを1つ足す、共有リンクを貼り直す。この3つの調整で2回目を組みます。ボードもアジェンダも、同じ場所に置き続けることが効きます。

ステップ4:2回目に、ありがちなこと
慣れて雑になる、同じProblemがまた出る、逆に意見が減る、時間が余る。どれも2回目に起きる典型で、それぞれ対処が決まっています。

よくある疑問

Q. 2回目も、あまり盛り上がりませんでした
盛り上がりを測る物差しを、笑い声から付箋の枚数と実行率に持ち替えてください。静かでも、付箋が出て、アクションが決まり、それが翌週実行されたなら、そのふりかえりは機能しています。にぎやかさは結果としてあとから付いてきます。どうしても場が固いなら、次の型②(よいところを伸ばす)が特効薬です。

Q. 毎週90分は、チームの合意が取れそうにありません
2回目以降は60分に畳むのが現実解です。リンク先で時間を60分にして、DPAを読み上げ1分に、共有をラウンドロビン1周きっかりに。それでも回るのは、1回目に90分かけて型を体験したからです。隔週90分より、毎週60分の方がカイゼンのサイクルは速く回ります。60分に組み替えた状態のリンクも置いておきます。

▶ 同じ構成の60分版で「ふりかえりを作る」を開く

Q. チームから「またKPT?」と言われました
前向きに受け取ってください。手法の名前を覚えて、繰り返しに気づけるほど、チームがふりかえりに関心を持っている証拠です。返しはこうです。「そうです、同じKPTです。ただ今日は、前回のΔを2つ反映してあります。どこが変わったか、ぜひ探してみてください」。同じ手法でも、進め方は毎回進化している。それが伝わると、「またか」は「今回はどう変わる?」に変わります。それでも飽きの気配が濃いなら、無理に引き止めず、レッスン5から新しい型に進みましょう。飽きは、次の型への追い風です。

Q. 3回目も同じKPTでいいですか?それとも次の型へ?
どちらでも正解です。チームがKPTに乗ってきているなら、3回目・4回目と続けて構いません。このコースの続きは待っていてくれます。目安をひとつだけ。+/ΔのΔが出なくなってきたら、今の型を乗りこなせたサインです。次の型で新しい視点を入れる好機です。

今週の実践

前回の写真と+/Δを見返して、5つの観点で1回目を採点してください。改善テーマを1つ選び、それを反映した2回目のアジェンダを作って、チームに配り直します。当日は3つの差分、特に冒頭1分のTry確認を忘れずに。終わったら今回も写真と+/Δを残します。もうお分かりのとおり、それが3回目の材料です。

レッスン5からは、目的の違う型を1つずつ試していきます。まずは「よいところを伸ばす」型。ふりかえりが明るくなる型です。

このレッスンに関連する手法

進め方の詳細は各手法ページで確認できます。

今週の実践課題

アジェンダはふりかえりを作るを開き、目的で「①短期間をふりかえる(2周目)」の型を選ぶと3分で作れます(印刷・共有リンク対応)。

  • 前回の+/Δの写真を見返し、本文の5つの観点で1回目を自己採点する
  • Δを1つ以上反映した2回目のアジェンダを作り、チームに共有する
  • 前回いちばん手が止まった場面を1つ選び、問いカタログから問いを1つ足して2回目のアジェンダに追加する
  • 2回目の冒頭1分で、前回のTryが「やってみてどうだったか」を確認してから始める

ひとりで進める場合:前回のひとりKPTを見返して、書いたTryが実行できたかを確認しましょう。できていなければ、Tryが大きすぎなかったか・曖昧すぎなかったかを疑って、半分のサイズに作り直してみてください。

2回目は問いを1つ足す好機です。出来事の書き出しに「感情」の問いを1つ選んで、アジェンダに加えてみましょう。 → 問いカタログ