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PRACTICE — LESSON 6 / 12

型③問題を解消する

今週のゴール目安 約35分

表層的な問題を掘り下げて真の要因を見つけ、効果的なアクションを選べる

この型が効くチーム

「型③問題を解消する」は、繰り返し現れる問題の根っこに切り込むための型です。ふりかえりで出てくる問題の多くは氷山の一角で、見えている部分に対処しても、水面下の本体が残っていれば、また同じ問題が顔を出します。「レビューが遅い」に3回目のアクションを打っているようなチーム、対症療法の繰り返しに疲れてきたチームに、この型が効きます。

先に注意をひとつ。この型は、8つの中でいちばん体力を使う型です。問題と向き合い続けるのは、精神的にも根気のいる仕事だからです。毎週これをやると場が疲弊します。型①や型②とバランスよく織り交ぜて、「今週は掘るぞ」と決めた週にだけ取り出してください。そして掘るのは1つか2つだけ。全部の問題を1回で解消しようとしないことが、この型を使いこなす最大のコツです。

今週のアジェンダ。これをやってみましょう

5〜9人・90分の時間割です。

時間ステップ手法ねらい
0〜15分場を作る希望と懸念+3 dots懸念と希望を出し合い、今日掘るテーマを最大2つに決める
15〜45分掘り下げる5つのなぜ「なぜ?」を繰り返して、テーマの真因までたどり着く
45〜60分アイデアを出し合うささいなことの積み重ね真因に対して、1%でも変化を起こす小さな案をたくさん出す
60〜80分アクションを決めるEffort & Pain+SMARTな目標労力と効果の2軸で絞り、選んだ案を具体化する
80〜88分ふりかえりをカイゼンする3 dots(事後)冒頭と同じ3色ドットで気持ちを再計測し、効果を見る
88〜90分締めアクションを復唱し、ボードの写真を撮って解散

▶ この構成で「ふりかえりを作る」を開く

型③の手法一式が選ばれた状態で開きます。人数と時間を合わせ、共有リンクをチームに配ってから当日を迎えてください。当日はアジェンダを画面に開いたまま、上から順になぞります。

当日のボードを準備する

型③のボードは、KPTのような区画割りではなく、左から右へ流れる作業場として作ります。

型③のボードレイアウト。左に希望と懸念とテーマ選び・3 dots、中央に5つのなぜのツリー(テーマから下へなぜを繰り返し、真因を赤枠で選ぶ)、右にEffort & Painの2軸マトリクス

左端に希望と懸念のレーンと、3 dotsの小さな枠。懸念は青、希望は黄の付箋にすると、あとで見返したときに色で読めます。中央の一番広い場所は、開始時点では空白にしておきます。ここに5つのなぜのツリーが育っていくからです。テーマの付箋を一番上に貼り、「なぜ?」のたびに一段下へ要因をぶら下げ、枝分かれも自由。最後に選んだ真因を赤枠やマーカーで囲みます。右側にEffort & Painの2軸を先に描いておいてください。横軸が手間、縦軸が痛み。ささいなことの積み重ねで出た桃色の付箋を、ここへ無言で分類していきます。

この型のボードの美点は、終わったときにチームの思考の足跡がそのまま残ることです。何に困っていて、どう掘って、どこに真因を見つけ、何を選んだか。1枚の写真が、そのまま上長への説明資料になります。掘るテーマを最大2つに絞るのは、このツリーを深く育てるためでもあります。3本も4本も植えると、全部が浅い根で終わります。

詳細解説1。希望と懸念+3 dots(0〜15分)

手法カタログより:希望と懸念のやり方

型③の入口は、テーマ決めです。いきなり「問題を挙げてください」と始めると、大小の問題が散らばって、どれも浅くしか掘れません。そこで希望と懸念を使います。まず懸念(不安・問題)をひとりひとり付箋に書き、1人1枚ずつ簡潔に共有します。次に希望(どう変わりたいか)を書いて共有します。懸念だけでなく希望も出すのがミソで、「何が嫌か」と「どうなりたいか」の両方が揃うと、掘る価値のあるテーマが浮かび上がります。そして、今日話し合うテーマを最大2つに決めます。

決まったら、3 dotsで現在地を測ります。テーマに対する今の気持ちを、Good・Not bad・Badの3色のドットで貼ってもらうだけです。30秒で終わります。声かけは「このテーマ、いまの正直な気持ちはどのへんですか。深く考えず、直感で貼ってください」。これは最後にもう一度使うので、貼った場所を残しておいてください。Badにドットが並んでも、コメントは不要です。「なるほど、ここから始めます」とだけ受けて先へ。感想戦は事後の3 dotsのときに取ってあります。

「今日はぜんぶは掘りません。いちばん掘りたいものを2つまで選びましょう。選ばれなかった懸念は消えません、次回以降の在庫です」

テーマ選びで割れたときの実況も載せておきます。「AとB、どちらも票が入りましたね。判断材料をひとつだけ。今日90分かけて動きが出そうなのはどちらでしょう。大きい方ではなく、掘れそうな方を選ぶのがコツです」。重大さで選ぶと、手も足も出ない巨大テーマに90分吸われがちです。掘削の初回は、掘れる手応えのあるテーマで成功体験を作る方が、長期的にチームの掘る力を育てます。

詳細解説2。5つのなぜ(15〜45分)

手法カタログより:5つのなぜのやり方

テーマが決まったら、掘削の時間です。5つのなぜは、「なぜ?」を繰り返して要因を一段ずつ掘り下げ、真因を見つける手法です。「レビューが遅い」→なぜ?→「依頼に気づくのが遅い」→なぜ?→「依頼がチャットの雑談に埋もれる」→なぜ?→「レビュー依頼専用の場所がない」。3〜5回も掘れば、表面の症状とはまるで違う顔の真因が現れます。

進め方は、ボードにテーマを書き、下へ下へと要因をぶら下げていきます。枝分かれしてかまいません。掘り終えたら、いちばん下に並んだ真因の中で最も影響の大きいものをチームで選びます。

ここで、ファシリテーターに大事な注意があります。「なぜ?」を人に向けないことです。「なぜやらなかったの?」は問い詰めです。主語を出来事と仕組みに固定してください。声かけの形はこうです。

「『なぜあなたが』ではなく『なぜそれが起こったのか』で掘っていきます。人の名前が出てきたら、その人の後ろにある仕組みを探しましょう」

掘削の問答を、通しで実況してみます。「テーマは『リリース前がバタバタする』でした。これ、なぜ起きているんでしょう?」「直前に不具合が見つかるからですね」「なるほど(付箋を書いて一段下に貼る)。じゃあ、なぜ直前に見つかるんでしょう?」「結合テストが最後に集中してるから…」「それはなぜでしょう?」「テスト環境が1つで順番待ちになるのと、あと、完了の定義にテストが入ってないからかも」「お、枝が2本出ましたね。両方貼っておきましょう」。ここまでで4段。ファシリテーターがやったのは、答えを付箋にして下へ貼り、「なぜ?」を繰り返しただけです。分析はチームがやっています。

掘り止めの判断も進行の仕事です。目安は2つ。答えが「気合・注意・意識」の精神論に到達したら、一段浅い階層に戻ってください。精神論の一歩手前に、たいてい仕組みの真因があります。もうひとつ、同じ答えがループし始めたら、その枝は掘り切っています。「この枝はここまでにして、もう一本の枝を見ましょう」と移ります。

それでも掘るほど空気は重くなりがちです。途中で一度「ここまでで、意外だった発見はありますか」と、糾弾ではなく発見の枠に戻す問いを挟むと、場が持ち直します。5往復の「なぜ」は、正しくやっても圧が出ます。あなたの表情と相づちが柔らかいだけで、同じ問いの響き方がまるで変わることも、覚えておいてください。

詳細解説3。ささいなことの積み重ね(45〜60分)

手法カタログより:ささいなことの積み重ねのやり方

真因が見えたら、アイデア出しです。ここで多くのチームがやりがちなのが、真因の大きさに気圧されて「100%解決する完璧な案」を探し始めること。大抵は出ませんし、出ても実行されません。そこで、ささいなことの積み重ねです。1%でも変化を起こせる小さなアイデアを、とにかくたくさん挙げます。

最初にブレインストーミングの4原則を伝えます。批判しない、自由奔放を歓迎する、質より量、人の案に便乗する。この4つを口に出してから始めるだけで、出てくる量が変わります。

「完璧な解決策は探しません。この真因を1%だけマシにする案を、量で勝負してください。くだらないほど歓迎です。人の付箋への便乗、大歓迎です」

10分で20〜30枚出れば上出来です。質の判定は次の手法に任せて、ここでは広げることに徹します。手が止まってきたら、視点を変える呼び水を投げます。「真因を消す案じゃなくてもいいです。真因があっても被害を減らす案、真因に早く気づける案でもOKです」。解消・緩和・検知の3方向に広げると、二の矢三の矢が出てきます。先ほどの例なら、「テスト環境を増やす」(解消)だけでなく、「環境の予約表を作る」(緩和)、「完了の定義にテスト実施を1行足す」(検知・仕組み化)が並ぶイメージです。

詳細解説4。Effort & Pain+SMARTな目標(60〜80分)

手法カタログより:Effort & Painのやり方

出てきた案を、Effort(実行にかかる労力)とPain(解消される痛みの大きさ)の2軸マトリクスで絞ります。面白いのは進め方で、最初の3分は全員無言で、付箋をマトリクスに分類していきます。話さずに手だけ動かす。そのあと3〜7分で、表を眺めながら「これ、ここでいいの?」という疑問を共有し、必要なら動かします。無言の分類が先にあることで、声の大きい人の判断に全体が引っ張られるのを防げます。

狙い目は、Effortが小さくPainが大きい左上の領域です。ここから最大3つ、慣れないうちは1つを選び、型①で練習したSMARTな目標で「誰が・いつ・何を」まで具体化します。1%の小さな案なら、具体化も軽く済むはずです。問答はこうなります。「左上から『完了の定義にテスト実施を足す』を選びました。具体的には?」「タスク管理ツールの完了チェックリストに1行足します」「誰が、いつ?」「私が今日中に。文言はこの場で決めちゃいましょう」「できたと、どう分かります?」「来週のふりかえりで、直前に見つかった不具合の数を数えます」。真因に紐づいたアクションは、このように検証の方法まで自然に決まるのが特徴です。何を測ればいいかを、真因が教えてくれるからです。

詳細解説5。3 dots・事後(80〜88分)

手法カタログより:3 dotsのやり方

最後に、冒頭で貼った3 dotsをもう一度やります。同じテーマに、いまの気持ちのドットを貼る。BadだったドットがNot badに動いていれば、この90分で場の空気が変わった証拠です。動いていなくても落ち込む必要はありません。真因が見えてアクションが決まったのに気持ちがまだ重いのは、それだけ根の深いテーマに正面から向き合ったということです。事前と事後の比較は、ふりかえりの効果を目で見る、いちばん簡単な測定法です。

型③で起きがちなこと

その1、最初の「なぜ」で止まる。掘り慣れていないチームは、1段目から「うーん」と固まります。処方箋は、選択肢を差し出すことです。「たとえば、時間の問題ですか?情報の問題ですか?それとも段取り?」。ゼロから答えるより、選んで修正する方がずっと楽です。その2、途中で議論が横に逸れる。掘っている途中に「そういえばあれも問題で」と別の話題が生えてきます。摘まずに、駐車場を使ってください。ボードの隅に「あとで」の枠を作り、「大事そうなので、ここに停めておきますね」と付箋で退避。今日のツリーに戻ります。停めた話題は、次回の希望と懸念の在庫です。その3、真因が人の名前になりかける。「結局、◯◯さんが確認しないからでは」。ここが型③最大の急所です。すかさず一段深く掘ってください。「◯◯さんが確認できない状況って、何があるんでしょう?」。人の後ろには、必ず仕組みがあります。確認する時間がない、確認対象が多すぎる、確認の依頼が届いていない。そこまで掘れば、矢印は人から仕組みへ戻ります。

時間・人数が違うときの調整

60分の場合
。希望と懸念を10分に圧縮しテーマを1つに絞る、5つのなぜ20分、ささいなことの積み重ね10分、Effort & PainとSMART 15分、事後3 dots 5分。テーマ1つに絞るのが最大の時短です。問題が重すぎて60分で掘りきれない場合。無理に閉じず、「今日は真因の特定まで。アクションは次回冒頭の15分で」と2回に分けるのも立派な進行です。リモートの場合。5つのなぜはボード上でツリーを作りやすく、むしろ対面よりやりやすい手法です。無言の分類も、カーソルが見えるオンラインボードと相性抜群です。

ここまでのまとめ

実践に入る前に、ここまでの4ステップで学んだことを、ひとつずつ思い出しておきましょう。

ステップ1:この型が効くチーム
型③は、根っこを1つか2つだけ深く掘る型です。左から右へ流れる作業場を作り、希望と懸念・3 dots・5つのなぜのツリーを並べます。

ステップ2:希望と懸念+3 dots
懸念と希望を出して、最大2つに絞ります。選ぶ基準は「今日90分かけて動きが出そうなのはどちらか」。ここで絞りきれるかが、この型の成否を分けます。

ステップ3:ささいなことの積み重ね
1%でも変化を起こせる小さなアイデアを、全員無言でたくさん出します。そのあとEffort & Painで、手間が小さく痛みが大きいものから選ぶと、検証の方法まで自然に決まります。

ステップ4:3 dots・事後
最初の「なぜ」で止まる、議論が横に逸れる、真因が人の名前になりかける。この3つに備えます。掘りきれないときの分割のしかたも用意しました。

よくある疑問

Q. 掘っていったら、自分たちでは手が出せない組織の問題に行き着きました
よくあります。それ自体が発見です。真因ツリーの途中に戻って、自分たちの手が届く一番深い階層を探してください。組織の承認フローは変えられなくても、「承認待ちの間に着手できる作業の仕分け」は自分たちで変えられます。届かない真因は、記録して上長への相談材料にしましょう。掘った過程のツリーそのものが、説得力のある資料になります。

Q. 犯人探しの空気になってしまいました
「なぜ」が人に向いたサインです。一度手を止めて、「人ではなく仕組みを掘る」ルールを確認し直してください。付箋の書き方を「◯◯さんが遅い」ではなく「◯◯の作業が遅れる」と、主語を出来事に書き換えるだけでも空気は変わります。それでも重いなら、その問題は無記名で扱うか、今日は閉じて型②を1回挟んでから出直すのが賢明です。

Q. 5回も「なぜ」を繰り返す前に、3回目くらいで答えが出た気がします
それで構いません。「5つ」は目安であって、ノルマではありません。仕組みの言葉で語れる真因に触れたら、そこで掘り止めてOKです。逆に5回で足りなければ6回7回と掘ってください。判定基準は回数ではなく、「その真因に手を打てば、表面の症状が減ると自分たちで信じられるか」です。

Q. 毎週この型でやりたいくらい問題が多いのですが
気持ちは分かりますが、おすすめしません。問題の掘削は消耗戦です。月に1回この型、残りの週は型①や型②、が長続きする配合です。それに、型②でよいところを伸ばしていると、掘る前に消えている問題が意外とあるものです。

今週の実践

リンクからアジェンダを開き、チームに共有して90分。掘るテーマは最大2つ、選んだアクションは最大3つ。この上限を守ることが、今週いちばんの練習です。終わったら事前・事後の3 dotsの写真を並べて残しておいてください。

そして型③こそ、2回目が効く型です。今日のツリーで「手が届く真因」を選んだなら、届かなかった深い階層が残っているはず。第4週の5つの観点でふりかえってから、数週間後にもう一度、同じテーマの続きを掘ってみてください。アクションの結果という新しい証拠を持って掘る2回目は、1回目より確実に深く届きます。

レッスン7は、成功も失敗もまとめて栄養に変える型、型④学びを最大化する、です。緊張感のある型③のあとは、対照的に、失敗の話さえ明るくできる型が待っています。

このレッスンに関連する手法

進め方の詳細は各手法ページで確認できます。

今週の実践課題

アジェンダはふりかえりを作るを開き、目的で「③問題を解消する」の型を選ぶと3分で作れます(印刷・共有リンク対応)。

  • 本文のリンクから型③の構成で「ふりかえりを作る」を開き、人数と時間を合わせてチームに共有し、90分で実施する
  • 5つのなぜでは「人」ではなく「仕組み・プロセス」に矛先を向けることを冒頭で全員合意する
  • 3 dots(事前・事後)の変化を見比べて、ふりかえりの効果を確かめる

ひとりで進める場合:気になっている問題を1つ選び、「なぜ?」を5回書いてみましょう。3回目あたりから「人のせい」に向かいそうになったら、「仕組みの何がそうさせた?」と問い直すのがコツです。

掘り下げには「事実(原因となった出来事は?)」、アイデア出しには「発散と収束」の問いが使えます。 → 問いカタログ