チームは問題解決を見てはいけない
2026-07-29 ・ 元記事: Qiita
ある禅問答のような命題
あなたのチームは、どうやって問題と向き合っていますか?
この記事は、Agile Talks vol.1というイベントで話題に上がった「チームは問題解決を見てはいけない」という命題について、正面から向き合って考えてみるものです。
命題の出どころは、アジャイルコーチの田中さん(@callas1900)のセッション「レトロ・オブ・ザ・デッド」。辛いふりかえりを続けていたチームが、2年かけて良いふりかえりをするようになるまでの軌跡を紹介するものでした。そのなかで田中さんが、こう言ったのです。
「あるアジャイルコーチから、『チームは問題解決を見てはいけない』という禅問答のような問いを出されました。私のなかでは納得する答えを持っているのですが、ここでは伝えません。皆さんも考えてみてください」
この問いに正解はありません。人それぞれの答えがあるはずですし、「そもそもこの考えが間違っている」と考える人もいるでしょう。それでも、アジャイルコーチやスクラムマスターとしての思考を深めるために、とてもいい命題だと思っています。
以下に私なりの答えを書きますが、できれば「自分なりの答え」を少しでも考えてから読み進めてみてください。
田中さんのヒント
イベント後の懇親会で、私の考えをぶつけたうえで田中さんの話を伺いました。返ってきたのは、こんな問いでした。
「すぐそこにある問題と、遠くに見えるゴール、どちらを見たほうがいいと思う?」
それ以上の深掘りはあえてしませんでした。ここでも解釈は加えずにおきます。あなたはどう感じましたか?
ここからは、私なりの3つの答えです。
答え1:問題だけを見ると、跳べなくなる
チームの成長に欠かせない観点のひとつが、自己効力感(集団効力感)です。「できた」「うまくいった」という経験が自己効力感を高め、新たな実験や挑戦を促します。
一方、ふりかえりで最も陥りやすい罠が、「問題」のみにフォーカスしすぎることです。KPTを使うチームに特に顕著で、Problemばかりに話が膨らみ、Keepは出ない、Tryにもつながらない。問題だけを話し合い、落ち込んでふりかえりが終わる。そんな経験はないでしょうか(念のため添えると、KPT自体はしっかり使えばとてもいいフレームワークです)。
私は研修で、こう表現しています。
「人は『ここまでできた』という土台があって初めて、ジャンプできます。問題だけを見ていると、自分の真下にあるのは土台ではなく穴です。穴に落ちないように必死になって、高く跳ぼうとはできなくなります」
しかも、新しいチームで得られた「小さな成功」は、試行錯誤の末に生まれた貴重な実績です。問題ベースの解決策は「成功した試しのないもの」への対処なので、うまくいく保証がどこにもありません。一方、成功という実績をベースにすれば、成功を増やし失敗を減らす道筋が描けます。一歩ずつ階段を上れるのです。
チームは、まず成功体験をふりかえる。これが成長のための第一歩だと考えています。
答え2:問題ではなくゴールを見ると、チームは同じ方向を向く
こちらは、田中さんの考えに近いのでは、と思っているものです。
直近の問題にフォーカスすると、メンバーの視線はバラバラの方向に向きます。それぞれが「自分が注力したい(しなければと感じている)問題」を見て、問題1はAさん、問題2はBさん、問題3はCさん、と別々に動き出す。この分業は短期的には効率的に見えますが、長期的にはある弊害を引き起こします。属人化の加速です。
問題解決を最短手で行おうとすると、どうしてもその道が得意な人に任せがちになります。この解決方法に慣れきると、スキルの開きはさらに広がり、やがて誰かひとりが動かないと何も進まなくなる。問題解決そのものがボトルネックになり、チームの流動性が失われていきます。
だからこそ、問題を見る前にまずゴールを見るべきです。問題はチームの周りに無限に転がっていて、挙げようと思えばキリがありません。うまくいっているチームは、問題をすべて潰そうとはしません。遠くのゴールを見たときに、取り除かなければならない問題から優先的に、しかも全員で取り組みます。全員で取り組めば同じ問題は再発しにくくなり、互いのスキルも吸収し合え、問題が解決しやすい環境そのものが育っていきます。
このとき問題解決は、「見つかった問題を潰すネガティブな活動」から「ゴールを実現するためのポジティブな活動」に変わります。チームが見ているのはもう問題解決ではなく、ゴールです。
答え3:問題解決ではなく、課題創出をする
3つ目は、問題のとらえ方に関するマインドセットです。
ITのビジネスには、大きく問題解決型と課題創出型があります。顧客の悩みを具体化してシステムを作る大規模開発の多くは問題解決型。一方、アジャイルやスクラムで行われるビジネスの多くは課題創出型です。顧客に寄り添いながら漸進的に課題を見つけていくアプローチ、あるいは市場の課題を自ら発見して切り込むアプローチ。
課題創出型のビジネスでは、チームの動き方も課題創出型になっていきます。自分たちの成し遂げたいゴールを真剣に考え、そこへの道筋である「課題」を自分たちで見つけ、提案する。自分たちで本気で見つけた課題を本気で解決しようとするとき、チームのモチベーションは上がり、方向性はひとつに定まります。
方向性が定まったチームは、大きな推進力を生みます。コミュニケーションとコラボレーションが活発になり、透明性が上がり、検査と適応が自然と回る。自己組織化されたチームへと近づいていきます。
まとめ:見るべきは過去ではなく未来
これが私なりの「チームは問題解決を見てはいけない」の答えです。
もちろん、問題解決をしてはいけないわけではありません。ただ、ふりかえりのなかで見るべきは、過去に積み上がった問題の山ではなく、未来だと考えています。成功体験を土台にして、ゴールを見据えて、自分たちで課題をつくる。
あなたのチームは、いかがでしょうか。そして、あなたなりの答えはどんなものでしたか?