KPTがうまくいかないのはなぜ? YWTとの違いから考える
2026-08-24 ・ 元記事: Qiita
手法の概要と基本の進め方は、手法カタログのKPTとYWTのページにまとまっています。この記事は、2つの手法の性質の違いを考える読み物です。
「KPTは使わない」という声
ふりかえりといえばKPT、というくらい有名な手法です。その一方で、ふりかえりに慣れている方やアジャイルコーチをしている方の中に、「KPTは使わない」「チームの成長を阻害する」と考えている人がいるのも事実です。
いろんな現場のふりかえりを見てきて、たしかにYWTに比べると、KPTのほうが失敗に向かいやすい傾向があるように感じています。これはKPTが悪い手法だからではなく、手法ごとに性質が違うことから来ているのだと考えています。
Problemという言葉は、とても強い
多くの現場で、Keepは出すだけになり、Problemを解消することに熱心になっているように見えます。
「Problem」という単語は非常に強い力を持っています。問題があるなら解決しなければ、というエンジニアの傾向をさらに強めます。その結果、Keepは置き去りにされ、よいところをもっと伸ばすという「+を+へと高める行動」が起こりにくくなります。
「-を+に転じる行動」は、労力がかかるわりに報われないこともよくあります。しかも、改善した問題が本当に解消されたのかは、「同じ状況で問題が再現しなかった」ときにようやく実感できるものです。同じ仕事を何度もするわけではない仕事の性質上、その実感は得にくいままです。
成長が感じられないと、モチベーションは下がります。そして、ふりかえりで改善することの意義そのものを疑い始めます。これが、KPTがうまくいかないと言われる理由ではないかと考えています。
よいKPTのループを回す3つの意識
Problem駆動にならないために、次の3つをチーム全員が意識するか、ファシリテーターが意識しながら進めると、自分たちを伸ばしていくためのKPTが行えるようになります。
1. KPTの前に、何が起こったのかを思い出す
天野勝さんの『これだけ!KPT』ではこの思い出しについて書かれていますが、世に出ているKPTの記事では、この文脈が抜けていることがよくあります。
チーム全員で「個人個人やチームがどんな経験をしてきたか」を共有すると、Keep・Problemのタネがチーム全体で共有され、成長に沿ったものが出やすくなります。経験を共有することで共感も生まれます。
逆に思い出しをしないと、印象の強い出来事ばかりが挙がるようになり、本来なら伸ばすべき・改善すべききっかけを見逃してしまいます。
2. Keepからみんなで考え始める
KeepとProblemを同じターンで考えるチームは、Keepが少なくProblemが大多数になりがちです。問題が多く出るとチームの士気は下がりますし、成長感にもつながりません。まずKeepを考える時間をしっかりとって、前回から改善された点やよくなった点を共有します。
3. 個人のKeepをチームのKeepにするTryを考える
「KeepをTryにしづらい」という声はよく聞きます。「◯◯をつづける」という単なる継続のTryもよく見かけますが、これは誰にも意識されず、次回にはできていないことが多いです。
誰か1人ができたことなら、それをチーム全体に広げるための具体的なTryを考えます。全員ができるようになったら、それをさらによくする方法を考えていきます。1人ができて満足するのではなく、チームの「あたりまえ」になってはじめて、チームの成長につながります。
YWTには、それが型として組み込まれている
ここまでのKPTができて、はじめてYWTと同等以上の効果が出しやすくなると考えています。
YWTでは、Y「やったこと」で思い出し、W「わかったこと」でチームの学びや気づきにフォーカスし、T「つぎやること」でアクションを決めます。このYが、KPTの前にすべき思い出しと同じ役割を果たしています。Wは「わかったこと」という言葉から、プラス面の気づきに思考が向きやすくなります。Keepから考えるのと同じ効果です。
つまり、KPTを3つの意識つきで行ったときに近い効果を、何も意識しないYWTでも得やすいのです。KPTではなくYWTを推す人がいるのは、こういう理由もあるのだろうと考えています。
KPTにも、KPTの利点がある
とはいえ、KPTにも利点があります。「わかったこと」に比べると、KeepとProblemは具体的でイメージしやすく、ふりかえりやワークショップに慣れていない人でも意見を出しやすいのです。手法の説明のしやすさや、参考になる資料の多さでも、KPTのほうが楽な点が多くあります。
一方でYWTの利点は学習志向であることです。学びを次に活かすという考え方なので前向きにとらえやすく、個人の成長感を得やすい。無意識のうちに「+をより伸ばす」という点では、YWTのほうが向いている場面も多くあります。
結局どちらがいいのか
こちらがいい、という結論はありません。特性を理解したうえで、チームの状況にあわせて使い分けるのが一番です。
ライトに導入したいなら、説明のしやすさはKPT、効果の実感のしやすさはYWTにあります。どちらかにこだわる必要もないので、2週連続でKPTとYWTをそれぞれやってみて、しっくりくるほうを選ぶのもありです。
私の場合は、KPTで3〜4回ほど慣れてもらってからYWTに切り替え、そのあとは他の手法で手を替え品を替え、チームみんなで楽しみながらやる、というやり方が多いです。
そもそもKPTもYWTも、多種多様なふりかえりの手法のうちの1つでしかありません。正解などないのです。どの手法をやるにしても、「楽しむ」というマインドがとても大事です。
それでは、よいふりかえりライフを。