ふりかえり入門

ふりかえりの導入・始めかた

2026-07-15 ・ 元記事: Qiita

ふりかえりは、なぜ大事なのか

ふりかえりをやっている現場は増えました。KPTをやっている現場も増えました。それでも「なんのためにやってるの?」と問いかけると、「ずっとやってるから」「プロセスに組み込まれてるから」という答えが返ってきます。

「なぜ」が浸透していないのです。

ふりかえりの目的をひとことで言えば、「成長の原動力になる」「課題と原因の解像度を上げる」こと。この「なぜ」を最初に持てているかどうかで、ふりかえりの質は大きく変わります(そもそもの話は入門ガイドにまとめています)。

「もっと頑張ります」で終わらせない

若手を育成する際に、必ずぶつかる課題があります。「与えられた仕事が思ったように進まない」というものです。このとき「原因は何だ」と問われると、若手の多くは「自分の能力のせい」だと思ってしまいます。

その原因に対するTryが「もっと頑張ります」になってはいけません。「…何を?」となってしまいます。そこで大事になるのが、解像度を上げる問いです。

  1. 何が、どのようにうまくいっていないの?
  2. 期待値とのギャップは?
  3. 本当に能力が原因なの?
  4. 外部要因が原因ではないの?

こうやって丁寧に掘り下げる。自己批判に逃げるのではなく、本当に捕まえるべき課題に向き合い、向かうべき方向を定める。そのためにふりかえりをします。

必殺技ではなく、弱パンチを重ねる

ふりかえりでは「大きな問題を扱わないといけない」と考える人がいます。「せっかくふりかえりをしているのだから、この程度のことを出さなくても…」「すごい改善を、必殺技を出さなくちゃ」と。

でも実際にチームを変えるのは、「日々の声掛けをしましょう」「気軽にモブやろう」といった、仕事を進めていく中の小さなひっかかりです。

チームで仕事をするというのは、全員が別々のコントローラーを持っていて、全員が同じボタンを押さないと技が出ない状態。だから、全員が弱パンチを出せるようにするというのも立派なふりかえりです。小さな取り組みができるチームは強い。最初のころは必殺技を繰り出そうとしがちなので、意識的に止めましょう。

ふりかえりを、どう始めればいいのか

手法(プラクティス)から入ってもいい

YWTFun/Done/Learnのような手法から入るのは、まったくアリです。手法の持つ「儀式感」が、いい効果を出してくれます。

日報から始める

もっと手軽なのは、1日の最後の日報に「期待通りにうまくいったこと」「いかなかったこと」「その差分」を書き足すこと。ひと手間加えるだけで、それはもうふりかえりです。

実際にこれを続けた新人エンジニアには、はっきりした変化がありました。日報の質が変わり、目の前の課題だけでなく一段上の「なぜうまくいっていなかったか」を見て、具体的なアクションに落とし込めるようになったのです。経験→省察→概念化→実践という経験学習サイクルが回り始めた状態です(ひとりで始める具体的なやり方ははじめかたのページへ)。

チームには「なじませるように」始める

何も知らないチームに「さぁFun/Done/Learnだ」といきなり持ち込むのは、うまくいきません。知っている言葉から始めるのがコツです。

たとえば「やったこと」「つぎやること」を報告し合っているチームに、「わかったことを付けてみませんか?」と伝えたら、自然とYWTになりました。なじませるように、少しだけ方向を変える。熱意がある人ほど温度差で空回りしがちなので、相手の言葉で始めましょう。

ふりかえりを、どう組織に広めるのか

期待値をコントロールする

ふりかえりの効果を定量的に説明するのは、正直難しいです。だからこそ、「こういう効果を狙っているから、続けよう」という意義の共有が大事になります。

「なぜふりかえるのか」を関わる人と話し合っておく。そうすることで、必殺技を期待していた人が弱パンチを見てガックリする、という悲劇を防げます。伝えるのは「コミュニケーションのすれ違いを手前でリカバリできるようになった」「リリースの遅れを手前で助けられた」といった変化です。

「振り返り」に傷ついた人へ

ふりかえりにネガティブな気持ちを持っている人もいます。裁判所みたいな「振り返り」で心を傷つけられた経験のある人です。そういう人がイメージしているのは、半年〜1年のスパンを2〜3時間でふりかえる、ツラミが凝縮された反省会です。

だから、こう伝えます。

「1年に1回じゃなくて、毎週やって52倍カイゼンするんですよ」

頻度高く、弱パンチを重ねていくもの。ちょっとしたものの積み重ねでやっていくもの。それがふりかえりです。

感謝はツールからでもいい

ふりかえりでは感謝を伝え合う手法もありますが、いきなり人間に感謝するのが難しければ、ツールからでもいいんです。「Claudeありがとう」から始めましょう。

次の一歩

  1. そもそもふりかえりって何? → 3分で読める入門ガイド
  2. 今日から始めたい → ふりかえりのはじめかた
  3. チームの1回目を組み立てたい → アジェンダ作成

この対談の音声・映像はYouTube Liveで、ふりかえりの話はPodcast「ふりかえりam」で続けています。