ふりかえりのファシリテーターは、何をしている人なのか
2026-08-26 ・ 元記事: Qiita
進行するだけがファシリテーターではない
ふりかえりの目的は、プロセスのカイゼンです。カイゼンのためには良質で具体的なアクションが必要で、そのアクションをチーム全員で導き出すのを手伝うのがファシリテーターの役目だと考えています。
つまりふりかえりのファシリテーションとは、ふりかえりを通じてチームがカイゼンを行い、成長することを支えることです。ただ進行するだけでなく、カイゼンに結びつけられてはじめて、ファシリテーションができたと言えるでしょう。
私が実践してきた内容を、10のステップに分けて書き出してみます。
1. 目的を考える
課題を解消したい。カイゼンの要因を探ってもっと伸ばしたい。チームの仲をよくしたい。学びを共有したい。ふりかえりの目的はいろいろ考えられます。
毎週ふりかえりをしているチームでも、目的は毎週少しずつ違うはずです。ふりかえりは参加者全員の時間を1〜2時間と贅沢に使って立ち止まる場ですから、今回はどんなことを目的にするのかを考えて、時間を無駄にしないようにしましょう。
2. 構成を考える
目的が決まっても、やり方を0から考えるのは大変です。先人の知恵を借りましょう。『アジャイルレトロスペクティブズ』の5つの流れは、そのまま踏襲するのがやりやすいと感じています。
- 場を設定する
- データを収集する
- アイデアを出す
- アクションを決定する
- ふりかえりを終了する
各ステップに合う手法を組み合わせて構成を作ります。複数の目的がありそうなときは、手法の候補を複数用意しておくとよいでしょう。
構成で重要になるのが時間です。ふりかえりは仕事を止めて行っているので、決められた時間内でアクションを出すことが大切になります。どの手法にどれくらいかけると、どんな効果が出そうか。それを想像しながら順番を決め、手法どうしがうまくつながるかまで確認できたら、構成の完成です。
なお、この構成づくりはふりかえりを作るのページで、目的から手法を選んで時間配分まで組み立てられるようにしてあります。
3. 事前準備をする
構成が決まったら、必要な道具をそろえます。KPTをやると決めたなら「K/P/T」を書いたフリップチャートや、意見を出すときの鍵となる質問の一覧を用意しておきます。ブレインストーミングをやるなら、ルールを大きな字で書いて、参加者がいつでも確認できるようにします。説明するだけでは頭から抜けていってしまうからです。
道具は、ホワイトボードかフリップチャート、ホワイトボードマーカー、付箋(強粘着で2種類の大きさ、3色以上)、中字のマーカーを人数分+α、カラードット、タイマー。このあたりがあればだいたい足ります。
道具がそろったら、アジェンダを書いた紙も準備します。ここまでやったら、会議室の予約とオヤツの購入も忘れずに。
4. 空間を作る
予約した会議室を、意見が出しやすく、楽しい空間に変えます。ふりかえりでは意見の共有と交換による相互作用でよい意見が出るので、みんなの付箋が見やすいこと、会話がしやすいこと、個人ワークだけにならないことを意識した配置にします。
私がよくやるのは、意見をすべて眺められるようにホワイトボードを円状に配置し、動きながら会話できるよう広めにスペースを取り、中央の台座に付箋とペンを置く形です。椅子は全員分ではなくメンバーの半分だけ円状に置きます。全員が座ると個人ワークになりがちなので、疲れた人だけが座れるようにするためです。
この空間づくりには当然、時間がかかります。ふりかえりの15〜30分前には会議室に入って、どういう空間にするかを考えて作りましょう。
5. 場を作る
発言しやすく、前向きに考えられる空気を作り出すことが、もっとも重要です。お菓子を食べながら、飲み物を飲みながら、音楽をかけながらでもいいですね。手法としては、どんな雰囲気でふりかえりたいかを共有するDPAや、よかったこと・新しい発見を共有するGood & Newがシンプルで効果が高くおすすめです。
あと5ステップありますが、ここまでがファシリテーターの仕事の9割です。ここまでうまくいけば、参加者はファシリテーターの手を離れて自走し始めます。
6〜8. データを収集し、アイデアを出し、アクションを決める
データは、時系列・事実・感情の3つを集めて分析するとよいでしょう。時系列ならタイムライン、課題の深掘りならなぜなぜ分析、まんべんなく集めたいならORIDなどが向いています。
アイデアを出す段では、学びにフォーカスしたいなら学習マトリックスやCelebration Grid、たくさん出したいならブレインストーミングが合います。
アクションを決めるときに注意したいのは、アイデアのすべてをアクションにしないことと、具体的なアイデアに落とし込むことです。一度に多くを変えようとするとストレスが溜まるうえ、どのアクションがどう効いたのかが観測できなくなります。もっともコアな問題から、だれが、どのように、いつまでに変えていくのかを、できる限り具体的にしていきましょう。
この3つのステップでのファシリテーターは、一歩引いてチームの意見を眺めながら、抜け漏れはないか、重要な問題を見落としていないか、意見が出ていないところはないかを問いかけていけば大丈夫です。
9. ふりかえりを終了する
ふりかえりそのものやファシリテーターへのフィードバックをもらったり、お互いに感謝を言い合ったりして、気持ちよく終わりましょう。改善点をもらいたいならプラス/デルタが使えます。ここで得たフィードバックが、次回のふりかえりのカイゼンにつながります。
10. ふりかえりをふりかえる
ここまで頑張ったら、自分のふりかえりを見つめ直しましょう。どんな目的でどんな構成にしたか、それはうまくいったか。それぞれの手法の特性は何だったか、次はどこを改善すればよくなるか。ふりかえることで、自分のファシリテーションスキルも上がっていきます。ふりかえりの写真を残しておくだけでも、自分の成長が測れます。
おわりに
ファシリテーターが考えるべきことは、とても多いです。ただ、これらをやることでチームだけでなく自分が得られるものも計り知れません。慣れるほどファシリテーションは楽しくなりますし、目的を達成するために何をすればいいのかを考えるスキルが上がっていきます。
取り入れられるところから取り入れていただければ幸いです。皆さんも、よいファシリテーターライフを。