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FACILITATOR — LESSON 4 / 12

「特にないです」の正体。意見が出ないときの介入

今週のゴール目安 約41分

意見が出ない5つの原因を見分け、「書く時間」「問いの分割」「形式変更」の3つの介入を使い分けられる

「うちのチーム、ふりかえりで意見が出ないんです」。ふりかえりの相談として、おそらく一番多く寄せられる悩みです。問いを投げても、返ってくるのは「特にないです」「大丈夫です」。数秒の沈黙のあと、ファシリテーターが仕方なく自分の話で埋める。あの時間の、進行席から見た心細さといったらありません。

ここで、ひとつ思考実験です。同じ「特にないです」でも、頭の中はこんなに違います。

Aさんの頭の中
「レビューの件、言いたい。でも言ったら山田さんを責めてるみたいになるよな…やめとこう」

Bさんの頭の中
「今週…?何やってたっけ、覚えてない…」

Cさんの頭の中
「なんかモヤモヤはあるんだけど、なんて言えばいいのか…」

3人とも、口から出る言葉は同じ「特にないです」。でも、必要な助けは全員違います。Aさんに必要なのは安心、Bさんに必要なのは思い出す材料、Cさんに必要なのは言葉にする時間。

先週の道具(聴く技術・沈黙の見分け)を持ってしても意見が出ないとき、何が起きているのか。今週はそこに踏み込みます。最初に、一番大事な前提から。「特にないです」は、嘘でもやる気のなさでもありません。それは症状です。そして症状が同じでも、原因は5つに分かれます。

「特にないです」の5つの正体

「特にないです」は、たいてい額面どおりではありません。本当に何もない人は、実はほとんどいないのです。意見はあるのに出てこない。その理由が5つあります。

大事なのは、この5つを見分けられるようになることです。理由が違えば、打つ手も変わります。安心がなくて黙っている人に「もっと具体的に思い出してください」と言っても効きませんし、単に記憶が飛んでいる人に場作りをやり直しても遠回りです。まず全体像を見て、それから1つずつ、中で何が起きているのかを見ていきます。

正体中で起きていること処方箋
① 安心がない言うと損しそう・責められそう場作りへ戻る(DPA・感謝)
② 思い出せない1週間前の記憶が消えている思い出しの時間と材料を渡す
③ まだ言葉になっていない考え中。急かすと消える書く時間を取る・待つ
④ 形式が合わない挙手や口頭が苦手書く・匿名・順番制に変える
⑤ 言っても無駄だと学習前に出した意見が放置された拾った意見を必ず使って見せる

①安心がない
意見はある。でも、言うと損をしそうだと感じている。「これを言ったら誰かを責めることにならないか」「自分の仕事が増えるだけじゃないか」「的外れだと思われないか」。レッスン2『場を設計する。ふりかえりは始まる前に半分決まっている』でやった場作りの問題です。見分けるサインは、雑談では話すのにふりかえりになると黙ること、そして発言前に誰かの顔色をちらっと見ることです。

②思い出せない
意見を持つ以前に、材料がない状態です。1週間前の火曜日に何をしていたか、即答できる人はほとんどいません。人間の記憶は、私たちが思っているよりずっと早く消えます。サインは、問いのあとに視線が宙をさまよい、「えーっと、何やってたっけ…」という表情になることです。

③まだ言葉になっていない
感じてはいるけれど、言語化が追いついていない状態です。「なんかやりづらかった」の「なんか」が、まだ形を持っていない。レッスン3の「考えている沈黙」はこれです。急かすと、生まれかけの意見はしぼんで消えます。

④形式が合わない
意見も言葉もある。でも、みんなの前で挙手して口頭で発表する、という出し方が合わない人がいます。じっくり書く方が得意な人、大人数の前だと固まる人、母語でない言語で参加している人。サインは、チャットや1on1では饒舌なのに、全体の場では静かなことです。

⑤言っても無駄だと学習した
一番重く、一番ファシリテーターの責任が大きい正体です。過去に勇気を出して出した意見が、流された。決まったアクションが、実行されなかった。それを何度か経験したメンバーは、合理的な判断として口を閉じます。サインは、ベテランほど静かなこと。そして「どうせ変わらないですし」という言葉が、雑談のどこかに落ちていることです。

現実には、正体は単独では現れません。②と③は隣り合わせですし、①が長く続いたチームは⑤へ移行していきます。厳密な診断は要りません。「今の『特にない』は、どれが濃そうか」という当たりをつけるだけで、打つ手の精度は大きく変わります。

正体が違えば、効く手も違います。①に思い出しの時間を渡しても無意味ですし、②に安心を保証しても意見は出ません。ここからは処方箋を、効き目の広い順に見ていきます。

個人ではなく、場の温度を疑う

処方箋に入る前に、視点をひとつ足しておきます。意見が出ないとき、私たちはつい「静かなメンバー」個人に目を向けます。でも多くの場合、原因は個人ではなくにあります。場は固体ではなく流体です。同じチーム、同じメンバーでも、日によって、時間帯によって、温度は上がったり下がったりします。

場を沈静化させる要因は、思いのほか俗っぽいものです。夕方の疲労。締切直後の燃え尽き。直前に重い会議があった。部屋が寒い、暗い、狭い。人数が多すぎて1人あたりの持ち時間が薄い。誰かの機嫌が全員の視界に入っている。逆に、場を活性化させる要因もまた俗っぽい。明るい挨拶で始まる。最初の5分で小さな成功が共有される。お菓子がある。立って動きながら話す。つまり、場の温度は設計で変えられるということです。「今日は出ないな」と感じたら、目の前の個人を診断する前に、まず場の条件を疑ってください。時間帯を変える、冒頭に感謝を挟む、休憩を入れる。それだけで別のチームのように話し出すことは、珍しくありません。

話す前に、書く

もし介入をひとつしか選べないなら、迷わずこれです。共有の前に、全員が黙って付箋に書く時間を取る。5分で構いません。

書く時間は、5つの正体のうち3つに同時に効きます。

正体書く時間
① 安心がない
② 思い出せない
③ 言葉になっていない
④ 形式が合わない
⑤ 言っても無駄

③の言語化前の人には、考えを言葉に変換する猶予そのものです。④の口頭が苦手な人には、得意な出力形式です。そして①の安心がない人にとっても、「話す」より「書く」の方が心理的なハードルは一段低い。さらに、書かれた付箋は声の大きさと無関係に等価なので、発言力の偏りも自動的に補正されます。はじめてのふりかえり、のぞいてみよう:3人チームの30分を実例でが「書く5分→共有7分」の順で設計されていたのは、この理由からです。

運用のコツを3つ。第一に、書く時間は完全な沈黙にすること。誰かが話し始めると、全員の思考がそちらに引っ張られます。「5分間、おしゃべり禁止で書きましょう」と、沈黙を予定に入れてしまう(レッスン3の裏技です)。第二に、枚数の目安を言うこと。「1人3枚を目標に。もちろん何枚でも」。目標が数字になると、手が動きやすくなります。第三に、書けない人がいても急かさないこと。1枚も書けていない人がいたら、机間巡視のついでにそっと「今週いちばん時間かかったことでもいいですよ」と、次に説明する小さい問いを個別に渡します。

問いを小さく割る

②思い出せない、に効く本命です。意見が出ないとき、問題は答える側ではなく問いの側にあることが、実はとても多いのです。

「今週どうでしたか」という大きい問いを、「いちばん時間を取られたことは」「誰かに助けられた瞬間は」など具体的な小さい問いに割る

「今週、どうでしたか?」は、一見親切で、実は最も答えにくい問いです。範囲が1週間全部で、観点も自由。どこから話せばいいか分からず、脳は検索を諦めます。これを、記憶の引き出しを直接開ける問いに割ります。「今週、いちばん時間を取られたことは?」「誰かに助けられた瞬間、ありました?」「昨日の自分にひとこと言うなら?」「来週も続いたら嫌だな、と思うことは?」。時間・場面・人に紐づいた問いは、具体的な記憶を直接呼び出します。

割った問いは、一度に全部出さないでください。1つ出して、書いて、共有して、次の問い。一問ずつです。それから、思い出しには材料も効きます。チームのカレンダー、チャットのログ、タスクボード。「見ながらでいいですよ」の一言で、②の正体は半分解決します。ただし順番に注意。まず記憶から出して、出なくなってから材料を見る。最初から材料を見ると、全部を律儀に書き写そうとして時間が溶けます。

問いを割った実例を、ひとつ挙げます。「今週のProblemを書いてください」と出したら、場が固まりました。手が動きません。そこでファシリテーターが言います。「問いを変えますね。今週、『あー、めんどくさいな』って思った瞬間、ありませんでした?どんな小さいことでも」。ぱらぱらと手が動き始めます。「定例の議事録書くの、毎回めんどくさい」「テスト環境の立ち上げ待ち」。Problemという言葉は、実は重い言葉です。問題と呼ぶほどのことか?と自己検閲が働く。「めんどくさかったこと」なら、検閲を通らずに出てきます。同じものを聞いているのに、です。問いの言葉選びひとつで、出てくる量は倍も変わります。

問いを立て直す判断のサインは、先週やった「困っている沈黙」です。問いを出した直後、誰の手も動かず、目が泳いだら。それは参加者の問題ではなく、問いの直し時です。「ごめんなさい、問いが大きすぎました。◯◯に絞りましょう」と言い直せばいい。問いの修正を恥じないファシリテーターの姿は、それ自体が「間違えても直せばいい」という場のメッセージになります。

出し方の形式を変える

このステップでは、④形式が合わない、への手当てを学びます。

口頭・挙手・自由発言。これがふりかえりの標準形式です。ところがこの形式は、その場で考えをまとめて、割り込んで、声を張れる人に有利にできています。考えてから話したい人、話し出すタイミングを計るのが苦手な人、大人数の前で声を出すのに緊張する人、母語でない言語で参加している人は、それだけで不利です。意見の質ではなく、出し方の得意不得意で選別が起きているわけです。

しかも、この選別は誰の目にも見えません。「Aさんはよく発言する」「Bさんは静か」という観察になり、性格の話として片づけられます。本当は形式の話なのに。だから形式を変えると、静かだった人が別人のように話し出すことがあります。

ラウンドロビン(順番制)
「1人30秒ずつ、順番にどうぞ。パスもありです」。発言のタイミングを自分で計らなくていいので、割り込みが苦手な人が救われます。声の大きい人の独走も自然に止まります。順番のひと工夫として、役職が上の人や意見の強い人を後ろに回すと、先に出た意見が引っ張られにくくなります。同じ意見を持っていた人が「私もそれ思ってました」と付箋を重ねて出すルールにすると、意見の分布まで見えて一石二鳥です。

ペアで話してから全体へ
いきなり全員の前で話すのはハードルが高くても、隣の1人になら話せます。「まず2人で3分話して、出てきたことを全体に共有してください」。ペアの中で一度声に出した意見は、全体にも出しやすくなります。

匿名で書く
①安心がない、が根深いときの非常口です。オンラインボードの匿名付箋や、紙を折って箱に入れる形式なら、名前と意見を切り離せます。ただし匿名は応急処置です。匿名でしか意見が出ない状態を常態化させず、出てきた意見を丁寧に扱うことで、記名でも話せる場に育てていきましょう。

声とテキストの二刀流
レッスン2でも触れました。「チャットに書いてくれてもいいですよ」の一言は、いつでも出せる保険です。

形式の話の締めくくりに、大事な原則をひとつ。

ここまでの道具を手に入れると、多くのチームが次に「全員が均等に話す場」を目指し始めます。発言していない人を数え、話しすぎている人を止め、全員が同じくらい喋れば良い場になるはずだ、と考える。ファシリテーターの成績表を「発言量の均等さ」で付けたくなるのです。測りやすいので、無理もありません。

でも、それは目的ではありません。発言量をストップウォッチで揃えても、良いふりかえりにはなりません。目指すのは、必要な声が場に出ていること、そして出したい人に機会が開いていることです。静かな人が90分でたった2枚しか付箋を出さなくても、その2枚がチームの核心を突いていることはよくあります。逆に、たくさん話しているのに中身が薄い90分もあります。見るべきは発話量の分布ではなく、「言いたいのに言えていない人」がいないかどうか。ラウンドロビンも書く時間も、量を揃える道具ではなく、機会を開く道具として使ってください。

一番重い正体に向き合う

残った①安心がない、⑤言っても無駄、は小手先の介入では治りません。

①の根本治療は、レッスン2に戻ることです。DPAでルールを作り直す。感謝から始めて場の温度を上げる。ボードに向かう配置で「人対問題」の構図を作る。そして、リスクのある発言が出た瞬間に、レッスン3『聴く技術。ファシリテーターの主な動詞は「話す」ではない』の受容で丁寧に受ける。安心は一日では育ちませんが、毎回の場作りと受け方の積み重ねで、確実に育ちます。もうひとつ、ファシリテーター自身が先に小さく自己開示するのも効きます。「今週、私は見積もりを外して火曜が地獄でした」と自分の失敗を先に一枚出す。最初の一枚がリスクのある内容だと、二枚目以降のハードルは目に見えて下がります。率先垂範は、安心の呼び水です。

⑤の治療法は、たったひとつです。出た意見が使われるところを、見せる。ふりかえりで出た意見を、次の週のアジェンダや行動に、目に見える形で反映する。そして必ず口に出して伝える。「先週◯◯さんが出してくれたレビュー待ちの件、今週から担当表を変えてみました」。意見を出す→何かが変わる、のループが一周まわった瞬間、チームの中の「どうせ」がひとつ溶けます。逆に言うと、意見を集めるだけ集めて使わないふりかえりは、回を重ねるほど⑤を育てる装置になります。アクションを確実に回す仕組みはレッスン7で扱いますが、原理は今週覚えてください。意見が出ないチームの多くは、意見を出さないのではなく、出すのをやめたのです

やってはいけない介入

効かないどころか逆効果の手も、正直に並べておきます。詰める指名。「◯◯さん、何かないの?」と、沈黙の責任を個人に載せる聞き方です。レッスン3の「機会を作る」指名との違いは、パスの余地と、日頃の観察があるかどうか。沈黙を自分の話で埋める。ファシリテーターの独演が始まると、メンバーは「待っていれば進行が埋めてくれる」と学習します。あなたが沈黙に耐えた分だけ、チームが話します。出てきた小さい意見を裁く。「それは些細なことなので」「それは前も出ましたね」。せっかく出た一枚をこう扱うと、次の一枚は出てきません。小さい意見は、大きい意見の呼び水です。回答を用意して待つ。「意見が出なかったらこれを言おう」と自分の答えを温めておくこと自体が、レッスン1『ファシリテーターは「答えを出す人」ではない』でやった誘導の入口です。用意しておくべきは答えではなく、小さく割った予備の問いです。

ここまでのまとめ

実践に入る前に、ここまでの4ステップで学んだことを、ひとつずつ思い出しておきましょう。

ステップ1:「特にないです」の5つの正体
意見が出ない理由は5つに分かれます。安心がない、思い出せない、まだ言葉になっていない、形式が合わない、言っても無駄だと学習した。正体が違えば効く手も違うので、まず見分けます。

ステップ2:話す前に、書く/問いを小さく割る
共有の前に、全員が黙って付箋に書く時間を取ります。書く時間は完全な沈黙にすること。そして、問いが大きすぎると答えられないので、問いの側を小さく割ります。

ステップ3:出し方の形式を変える
ラウンドロビン、ペアで話してから全体へ、匿名で書く、声とテキストの二刀流。目的は全員が均等に話すことではなく、その人が出せる形を用意することです。

ステップ4:一番重い正体に向き合う
いちばん重いのは「言っても無駄だと学習した」です。出た意見が使われるところを見せるしかありません。詰める指名、沈黙を自分の話で埋める、小さい意見を裁く、はやってはいけない介入です。

よくある疑問

Q. 書く時間を取っても、1枚も書けない人がいます
枚数ゼロを責めないでください。その人の中では③言語化前か②思い出せないが起きています。個別に小さい問いを渡すか、「他の人の付箋を見て、思い出したことを書くのでもOKです」と、他人の付箋を呼び水に使う道を開きましょう。それでも書けなければ、その回はそれでいい。書けなかった人が観察していないわけではありません。

Q. リモートだと、書く時間に本当に書いているのか分かりません
オンラインボードなら、付箋が増えていく様子がそのまま見えます(レッスン3で触れたとおり、これはリモートの数少ない利点です)。増えていない人がいても、画面の向こうで考えている最中かもしれません。全体に向けて「あと2分です。まだの人は1枚だけでも」と時間で区切り、個人を名指しで監視しないこと。書く時間の安心は、見張られていない感覚とセットです。

Q. 意見は出るけど、いつも同じ人ばかりです
それは「出ない」の亜種で、偏りの問題です。書く時間とラウンドロビンで発言機会を均し、レッスン3のバランシングと静かな人への機会作りで補います。よく話す人を止めるのではなく、話していない人の口を開ける。引き算でなく足し算で均すのがコツです。

Q. ふざけた意見ばかり出て、脱線します
まず、笑いが起きているなら場は死んでいません。①安心がない、の対極です。問題は流れが戻らないときだけ。コツは、一度ちゃんと笑って受けてから、「それ、半分くらい本気のところありません?」と芯を拾うことです。冗談の皮の内側に本音が包まれていることは、本当に多い。「定時後の会議やめてくれ〜(笑)」は、ほぼ本音です。付箋に書いてボードに載せてしまえば、冗談は議題に変わります。それでも脱線が続くなら、DPAに立ち返って「笑いは歓迎、ただし付箋にしてから」を約束にしましょう。

Q. 全部やっても、出ないときは出ません
あります。その回は、無理に絞り出さないでください。信号機で今の温度だけ確認して、早めに切り上げる勇気も、ファシリテーションです。ただし、出なかったという事実は貴重なデータです。5つの正体のどれが濃そうだったかをメモして、次回の設計を変える。うまくいかなかったふりかえりを次に活かす方法は、レッスン9「ふりかえりのふりかえり」で扱います。

今週の実践

介入は一度に全部やらず、2つに絞ります。まず、書く5分を必ず入れる。共有の前に、全員が黙って付箋に書く時間です。次に、問いを事前に3つに割っておく。メインの問いと、それが空振りしたときの小さい予備の問い2つ。この2つを仕込んだうえで、当日「特にないです」に出会ったら、すぐ次へ流さず、心の中で推理してください。今のは5つのうち、どれだろう、と。

推理の手がかりを、もう一度置いておきます。

正体打つ手
① 安心がない場作りへ戻る
② 思い出せない材料を渡す
③ 言葉になっていない書く時間・待つ
④ 形式が合わない形式を変える
⑤ 言っても無駄使って見せる

そしてもうひとつ、今週から始めてほしい長期の一手があります。前回のふりかえりで出た意見を1つ、目に見える形で使い、それをチームに伝えることです。「あの意見、こうなりました」。この一言の積み重ねが、半年後の「意見が出るチーム」を作ります。

最後に、今週の内容を1枚に圧縮しておきます。特にないです、は症状であって診断ではない。正体は5つ。書く5分は3つの正体に同時に効く万能薬。問いは小さく割って一問ずつ。形式は変えられる。そして、出た意見を使って見せることが、明日の意見を作る。

レッスン5は、意見が出たあとに起こる、もうひとつの難所です。出てきた意見が「誰々のせい」に向かい始めたとき、ファシリテーターはどう舵を切るか。人と問題を切り離す技術を扱います。

このレッスンに関連する手法

進め方の詳細は各手法ページで確認できます。

今週の実践課題

  • 次のふりかえりで、共有の前に「全員が黙って付箋に書く時間」を5分、必ず取る
  • メインの問いを、事前に3つの小さい問いに割っておく(例は本文の問いの階段を参照)
  • 「特にないです」が出たら、すぐ次へ行かずに、5つの正体のどれかを心の中で推理してみる
  • ふりかえりで出た意見を最低1つ、次の週の行動やアジェンダに目に見える形で反映し、「先週のあの意見、こう使いました」と伝える

ひとりで進める場合:自分が「特にないです」と答えた直近の場面を思い出し、あのとき本当は5つの正体のどれだったのかを自己分析してみましょう。自分の「特にない」の癖を知ると、他人のそれも見えるようになります。