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PRACTICE — LESSON 1 / 12

ふりかえりをはじめる

今週のゴール目安 約36分

ふりかえりが何かを自分の言葉で説明でき、チームでふりかえりの時間を確保できる

ふりかえりのことを知ろう

「ふりかえり」は、業界によってさまざまな名前で呼ばれています。ソフトウェア開発の仕事の中で、アジャイルのプロセスを用いた現場ではレトロスペクティブ。1〜2週間に一度チーム全員で集まり、何が起こったかを分析して、関係性やプロセスをカイゼンするアクションを考えます。SRE(Site Reliability Engineering。サービスを安定して動かし続けることを専門にする職種)の現場ではポストモーテム。発生した障害や問題を事後検証し、再発を防ぎます。人材育成の現場ではリフレクション。内省によって自身と向き合い、成長を促します。

では、実際のふりかえりはどんなふうに進むのでしょうか。ここで一度、はじめてのふりかえり、のぞいてみよう:3人チームの30分を実例でに目を通してみてください。ある販促チームの初回を、付箋のボードごと見学できます。2〜3分で読めます。実際の光景を見てから読み進めると、このあとの話がぐっと入りやすくなります。

呼び名によって性質は少しずつ違いますが、どれも「自分たちの活動をふりかえる行為」です。このコースでは、これらすべてをまとめて「ふりかえり」と呼びます。プロジェクト全体を見直すことも、仕事の進め方を継続的にカイゼンすることも、問題を検証して再発を防ぐことも、全部ふりかえりです。

大事なのは、ふりかえりは反省会ではないということ。うまくいったことも、うまくいかなかったことも、同じようにチームの材料として扱います。過去を糾弾するためではなく、過去を材料に未来を描くための時間です。まず「立ち止まる」こと自体に価値があります。走り続けているチームは、ズレていても気づけません。週に一度、全員で足を止める。ふりかえりの効果の半分は、実はこれだけで生まれています。

ふりかえりで、何が得られるのか

導入の話に入る前に、続けた先の景色を見ておきましょう。ふりかえりの効果は、鎖のようにつながって現れます。最初に変わるのはコミュニケーションです。週に一度、全員が同じボードを見て話す時間があるだけで、普段の会話の量と質が変わります。コミュニケーションが変わるとコラボレーションが変わります。困りごとが早く共有されるので、助け合いが早くなる。そして小さなカイゼンの成功体験が積み重なると、「自分たちは変われるチームだ」という自己効能感が生まれ、それがチームの成長を加速させます。

逆に言うと、初回のふりかえりで劇的な何かは起こりません。必殺技ではなく、小さなカイゼンの積み重ねです。この期待値を最初にチームと(そして上司と)合わせておくことが、静かに効いてきます。

はじめかたは、チームの状況で変わる

ふりかえりの導入パターンは、2つの軸のかけ合わせで4つに分類できます。チームが前向きか・後ろ向きか、そして時間がとれるか・とれないかです。

まず、自分がどこにいるかを決めてください。そのうえで、そのパターンの始め方を読み込みます。4つ全部を読む必要はありません。「私はこれだ」と思ったものを1つ選んで、そこに挙げた記事を開いてみてください

① 前向き × 時間がとれる
号令をかけて始めるだけでOKです。慣れていないなら、週に一度90〜120分を確保しましょう。ポイントは、必ず毎週同じ時間・同じ場所に設定すること。そして最初に短い時間を取らないこと。「毎回時間が余るから短くしよう」という合意を後から取るほうが、「時間を伸ばしたい」と交渉するよりずっと建設的です。

このパターンで迷いやすいのは、時間の決め方です。ふりかえりは何分やればいいのかを読んでください。人数と対象期間から目安が出せます。「短く始めてはいけない」理由も書かれているので、90〜120分を確保する交渉材料にも使えます。あわせてふりかえりの導入・始めかたに目を通しておくと、初回の入り方の引き出しが増えます。

② 前向き × 時間がとれない
朝会・夕会の形で、短い時間から始めます。毎日5分でも、1週間で25分になります。5分でやることは「いまの状況と困りごとの共有」だけで十分です。

短時間で始めるコツは終わった直後の5分が、いちばん効くにまとめてあります。言い出し方のセリフ、5分で聞く2つの問い、反省会にしないための線引き、そして定例のふりかえりへどう橋渡しするかまで書いてあります。打ち合わせやリリースの直後という「すでにある集まり」に相乗りするので、新しく時間を取る交渉が要りません。

③ 後ろ向き × 時間がとれる
いきなり「ふりかえり」と銘打たないのがコツです。反省会で嫌な思いをした経験のある人は少なくありません。雑談や成功の共有、ランチ会など、心理的な抵抗が少ない活動から始めて、定着してから「実はあれがふりかえりだったんです」と種明かしする方が、ずっとうまくいきます。

入り方の引き出しを増やすならふりかえりの導入・始めかたを読んでください。抵抗のあるチームにどう持ちかけるかが具体的に書かれています。あわせてふりかえりはチームのグラデーションを上げるもどうぞ。「ふりかえり」という言葉がなぜ誤解されやすいのか、反省会と何が違うのかが整理されているので、種明かしをするときの説明がそのまま手に入ります。

④ 後ろ向き × 時間がとれない
一番むずかしいパターンです。まずあなたひとりでふりかえりを始めて、変化を見せるところから。仲間を1人ずつ増やしていきましょう。

ひとりで始めるなら1日5分、ひとりふりかえりの始め方が最短です。誰の許可も要りません。3行書くだけの5分の使い方から、続かない日の扱い方、1週間続いたあとの次の一歩まで書いてあります。ここで自分に起きた変化が、そのままチームを誘うときの説得材料になります。

始める前に用意する4つのもの

時間。慣れないうちは90〜120分。人数が多いほど、対象期間が長いほど、時間は必要になります。しっかり時間を取って腰を据えてやることが、遠回りに見えて一番の近道です。

場所。会議室でもフリースペースでもかまいませんが、壁やホワイトボードに全員が向き合えるレイアウトを選びましょう。人と人が向き合うのではなく、全員が同じボードを見る。「私たち 対 問題」の構図を作り、心理的に話しやすくなります。

リモートでやる場合も、場所の準備は必要です。会議室に入れば自動で揃っていたものを、自分で用意することになります。用意するのは3つ。ひとつめは全員で見るボード。MiroやFigJamなどのオンラインホワイトボードに、付箋を貼る場所を四角い枠で作っておきます。枠が動かないようロックし、全員が開けるかを事前に確かめておきましょう。当日「入れません」から始まると、それだけで場の温度が下がります。ふたつめは通話ツール。できるだけ顔を見せてもらってください。頷きや表情が見えるかどうかで、話しやすさが変わります。みっつめは音声。できるだけミュートにせず、ずっとオンにしておくのがおすすめです。「うんうん」「あー、それある」といった小さな声が、場をあたためます。詳しくはリモートふりかえりのススメオンラインワークショップ・ふりかえりでホワイトボードツールを使いこなそうをどうぞ。なお、リモートは対面より時間がかかります。目安は対面の1.1〜1.5倍を見ておいてください。

道具。付箋、ペン、ホワイトボード。道具箱にまとめておくと毎回の準備が楽になります。オンラインならMiroなどのオンラインボードを。

スケジュール。毎週同じ曜日・同じ時間に。「今週はいつやる?」という調整コスト自体をなくします。カレンダーに定期予定として登録し、その枠には他の打ち合わせを入れない。この「聖域」を最初に作れるかどうかが、続くチームと消えるチームの分かれ目です。

初回のアジェンダ。これをやってみましょう

理屈はここまでにして、最初の1回を実際に組みましょう。初めてのふりかえりにおすすめの構成は、DPA → KPT → +/Δの60分です。ルールを決めて、いちばん定番の手法で話して、最後にやり方自体を見直す。KPTは1つの手法で「出来事を思い出す」「アイデアを出し合う」「アクションを決める」の3つをまとめて担えるので、初回はこれだけで必要な要素がひととおり入ります。

時間手法やること
0〜12分DPA「どんな雰囲気でやりたいか」「そのために何をするか」をみんなで決めて貼り出す
12〜52分KPTKeep(続けたいこと)→Problem(困っていること)→Try(試したいこと)の順に付箋で出し合う。KeepとProblemが「出来事を思い出す」、Tryが「アイデアを出し合う」と「アクションを決める」にあたります
52〜60分+/Δ今日のふりかえり自体の良かった点と、次はこう変えたい点を口頭でどんどん出す

このアジェンダは、下のリンクを開くとそのまま手に入ります。

▶ この構成で「ふりかえりを作る」を開く

アジェンダ作成ツール「ふりかえりを作る」が、初回向けの3手法が選ばれた状態で開きます。人数と時間を自分のチームに合わせて選び直すと、時間配分が自動で組み直されます。日付とチーム名を入れて、印刷するか、共有ボタンでチームのチャットにリンクを貼ってください。各手法のカードに進め方が書いてあるので、当日は上からなぞるだけです。

進行で意識するのは3つだけ。最初にひとりで書く時間を作る(いきなり議論を始めない)。Keepから話す(良かったことが先、問題は後)。+/Δを削らない(この5分が次回を良くします)。細かい進め方はレッスン2以降で、1つずつ深掘りしていくので、初回は完璧を目指さず「全員が1回は声を出して、最後まで通せた」を成功ラインにしましょう。

ここまでのまとめ

実践に入る前に、ここまでの3ステップで学んだことを、ひとつずつ思い出しておきましょう。

ステップ1:ふりかえりのことを知ろう
レトロスペクティブ、ポストモーテム、リフレクション。呼び方は違っても、やっていることは同じです。そして、どれも反省会ではありません。

ステップ2:はじめかたは、チームの状況で変わる
チームが前向きか後ろ向きか、時間がとれるかとれないか。この2軸4通りで、最初の一歩が変わります。前向きで時間がとれるなら、毎週同じ時間・同じ場所で始めます。

ステップ3:始める前に用意する4つのもの
時間、場所、道具、スケジュール。この4つだけです。初回のアジェンダはDPA → KPT → +/Δ。これで、最初の1回は必ず形になります。

よくある疑問

Q. ひとりで仕事をしています。チームがいません
ひとりのふりかえりも立派なふりかえりです。今週の「ひとりの実践」にあるYWT(やったこと・わかったこと・つぎやること)を、1日の終わりに5分だけ書いてみてください。ノートでもメモアプリでも構いません。書くのが続かない日は、シャワーの5分で頭の中だけでも十分です。形式に正解はありません。

Q. 何人から始められますか?
2人からできます。ペアでのKPTは立派なふりかえりです。逆に10人を超えるなら、4〜6人のグループに分けることを検討してください。1人あたりの発言時間が薄まると、参加ではなく見学になってしまいます。

Q. 初回に上司やリーダーを呼ぶべきですか?
チームの活動に日常的に関わっている人なら呼びましょう。そうでない「様子を見に来る」立場の人は、初回は遠慮してもらうのが無難です。見られている意識は、初回の発言のハードルを確実に上げます。成果を見せたくなったら、慣れてきた頃に最後の15分だけ見学してもらう形がおすすめです。

Q. 何が出たら成功ですか?
初回の成功条件は、良いアクションが出ることではありません。「全員が話せた」「時間内に終わった」「次回の予定が決まった」。この3つが揃えば大成功です。アクションの質は、回を重ねれば必ず上がります。

レッスン2は、このコースの背骨になる考え方、守破離と「8つの型」の話です。今日の初回構成が、なぜこの並びなのかも見えてきます。

今週の実践課題

  • チームで集まり、「ふりかえり導入の4パターン」のどれに自分たちが当てはまるかを話し合う(10分)
  • 本文のリンクから初回60分の構成で「ふりかえりを作る」を開き、日付を入れてチームに共有する
  • 毎週同じ曜日・同じ時間に90〜120分の定期予定をカレンダーに登録する
  • ふりかえりの道具箱を作る(付箋・ペン・ホワイトボードマーカー。オンラインならボードのテンプレートを1つ用意)

ひとりで進める場合:今日から1週間、1日の終わりに5分だけYWT(やったこと・わかったこと・つぎやること)を書いてみましょう。ふりかえりの感覚がつかめます。