← ふりかえり実践コース

PRACTICE — LESSON 10 / 12

型⑦長期間をふりかえる

今週のゴール目安 約37分

数ヶ月単位の活動をふりかえり、チームの成長を実感しながら長期の目標を作れる

短期のふりかえりだけだと、近視眼になる

1〜2週間の短いふりかえりを繰り返すことは、チームの成長を確実に加速させます。ただ、それと同じくらい大切なのが長期間のふりかえりです。短期のふりかえりだけを続けていると、チームはどうしても近視眼的になります。すぐ着手できるアクションばかりに目が向き、半年前に決めて今は誰も覚えていないアクションが形骸化していることに気づけません。目の前の一歩には敏感なのに、自分たちがどこまで歩いてきたかは見えていない。まじめにふりかえりを続けているチームほど、この状態に陥りやすいのです。

数ヶ月に一度、長めの期間を見つめなおすふりかえりには、短期にはない2つの効能があります。1つは成長の実感です。1週間単位では小さすぎて見えない変化も、3ヶ月分を並べると、想像以上に色々なことを成し遂げてきたことに気づきます。この実感が、チームの次の挑戦の燃料になります。もう1つは軌道の修正です。毎週の小さなカイゼンは、積み重なると思わぬ方向に進んでいることがあります。長い時間軸で眺めてはじめて、「私たちはどこへ向かっているのか」を問い直せます。

この型の出番は、四半期や期の変わり目、プロジェクトの一区切り、大きなリリースの後など、チームの節目です。所要時間は90分、できれば120分。他の型より長く感じるかもしれませんが、3ヶ月分の歩みを扱うのですから、1日あたりに換算すればわずか1分ほどの投資です。

この型の設計図

型⑦は5つの手法のリレーで、過去の検査から始まり、未来への贈り物で終わります。

まずアクションのフォローアップで、この期間に立てたアクションを総点検します。やりっぱなしのアクションを検査してはじめて、経験学習のサイクルが閉じます。次にStory of Storyで、この期間そのものを1つの物語として、着手から今日までの歩みを時系列に並べます。長期のふりかえりの土台になる、共通の年表づくりです。

年表ができたら、学びと成長で、歩みの上から「個人の学び・成長」と「チームの学び・成長」を言語化します。ここがこの型の感情的なクライマックスです。続いてアクションプランの作成で、型④でも使った短期・中長期の2軸の目標を作ります。長期のふりかえりでは、普段は脇役の中長期の目標が主役になります。締めは360度フィードバック。この期間に互いに起こった変化を、贈り物として伝え合って終わります。

事前準備。この型だけの宿題

型⑦には、当日より前にやることがあります。過去の記録を集めておくことです。毎週のふりかえりで撮ってきたボードの写真、決めたアクションの一覧、貼り出した目標。型①からずっと「終わったら写真を撮る」を続けてきたのは、実はこの日のためでもあります。記録を年表の脇に貼っておくと、思い出しの速さと正確さがまるで違います。会場も、ボード2枚分(年表用とアクション用)の広さを確保してください。オンラインなら、過去のボードへのリンク集を1ページにまとめておきます。

今週のアジェンダ。これをやってみましょう

5〜9人・90分を想定した時間割はこちらです。

時間ステップ手法ねらい
0〜15分場を作るアクションのフォローアップ期間中のアクションを総点検し、経験学習のサイクルを閉じる
15〜45分出来事を思い出すStory of Story期間全体の歩みを、1本の年表として全員で並べる
45〜60分アイデアを出し合う学びと成長個人とチームの学び・成長を言語化する
60〜78分アクションを決めるアクションプランの作成次の期間に向けた短期・中長期の目標を作る
78〜88分ふりかえりをカイゼンする360度フィードバック互いの変化を、贈り物として伝え合う
88〜90分締め年表と目標の写真を撮って解散

このアジェンダも、手で組む必要はありません。下のリンクを開いてください。

▶ この構成で「ふりかえりを作る」を開く

アジェンダ作成ツール「ふりかえりを作る」が、型⑦の手法5つが選ばれた状態で開きます。人数と時間をチームに合わせ、日付とチーム名を入れて、印刷か共有リンクで持ち帰ってください。節目の回なので、カレンダー登録機能でその場で予定を押さえてしまうのが特におすすめです。ここからは、なぞり方を手法ごとに解説します。

当日のボードを準備する

節目の回のボードは、いつもの倍の広さで構えます。

型⑦のボードレイアウト。左にアクション総点検(Closed・保留・Droppedの3分類)、右に3ヶ月の年表(章タイトルの帯、出来事、よかった・変えたいの目印、学びと成長のレーン、過去のボード写真の帯、次の3ヶ月の目標の枠)

左の一角がアクション総点検の場所です。Closed・保留・Droppedの3列を作り、事前準備で集めたアクション一覧を、判定前の状態で脇に積んでおきます。右の大部分が3ヶ月の年表。横一本の時間軸を引き、上に章タイトルを貼る帯、軸の上下に出来事とよかった・変えたいの付箋、その下に学びと成長のレーン(個人とチームで色分け)を取ります。そして一番下に、この型ならではの仕掛け、過去のボード写真の帯。毎週のふりかえりで撮ってきた写真を時系列に印刷して並べるか、オンラインならサムネイルを貼っておきます。3ヶ月前の記憶は、言葉より写真の方が早く戻ります。仕上げに、右下へ次の3ヶ月の目標を書く枠をひとつ。ここが今日のゴール地点です。

準備が大がかりに見えますが、その大半は「過去の記録を並べる」作業です。つまり、毎週写真を撮り、アクションを記録してきたチームほど、この日の準備は貼るだけで終わります。第3週から続けてきた小さな習慣の配当を、今日まとめて受け取ってください。

詳細解説1。アクションのフォローアップ(0〜15分)

手法カタログより:アクションのフォローアップのやり方

過去に立てたアクションを実施した結果どうなったかを検査する手法です。まず、どこまで遡るかを決め(今日は期間の最初まで)、対象のアクションをすべてボードに書き出します。事前準備で集めた一覧があれば、貼り出すだけで始められます。一度実施できていたアクションが今はできなくなっている、ということも起こるので、古いものも省かずに並べてください。

次に、各アクションの実施状況を全員で判定します。分類はClosed(完了・定着した)/保留(まだ途中)/Dropped(やらなかった・消えた)の3つが手軽です。グループに分かれず、1つずつ全員で認識を合わせながら進めるのがポイントです。「あれ、これって定着したんだっけ?」という判定のズレ自体が、大事な発見だからです。

「この3ヶ月で決めたアクションを全部並べました。上から順に、Closed・保留・Droppedのどれかをみんなで決めていきましょう。『やったつもり』と『やってない』が割れたら、それこそ話したいところです」

保留とDroppedのアクションは、責めずに「なぜ?」を一言だけ検討します。実施されなかった原因(そもそも認識が揃っていなかった、優先度が変わった)自体が学びです。そして、優先順位の下がったものはドラスティックにClosedへ倒してください。塩漬けの保留リストは、チームの心の重りになるだけです。最後に分類の傾向を眺めます。Droppedだらけならアクションの立て方(大きすぎ・多すぎ)の診断に、Closedが並ぶなら、それはこの後の「学びと成長」の最初の材料になります。

詳細解説2。Story of Story(15〜45分)

型⑤では1つのチケットの道のりを追いましたが、今日は題材のスケールを一気に上げます。この期間そのもの、たとえば「この四半期のプロジェクト」を1つの物語として、着手から今日までの歩みを追いかけます。期間の名前を書いてキャンバスの左上に置いたら、物語の始まりです。

10分ほどの個人ワークで、期間中の主な出来事を付箋に書き、左から右へ時系列に並べます。リリース、トラブル、メンバーの加入、方針転換。3ヶ月分なので、細かい出来事を全部拾う必要はありません。チームの流れが変わった曲がり角を優先してください。事前準備の写真をボードの下に時系列で貼っておくと、「ああ、この週はこれがあったんだ」と記憶が連鎖的に戻ってきます。

並べ終わったら共有です。年表を左から右へ、全員で歩き直します。そのうえで、次も繰り返したいよかったことと、避けたいこと・変えたほうがよいことを、別の色の付箋で年表の上に足していきます。共有が一巡したら、仕上げにひと工夫。年表を眺めて、期間をいくつかの「章」に区切り、章タイトルを付けてみてください。「手探りの4月」「障害と抗争の5月」「歯車が噛み合った6月」。チームの3ヶ月が物語として立ち上がり、この後の学びの言語化が一段やりやすくなります。章タイトルづくりの進行はこうです。「この年表、いくつかの時代に分かれてる気がしませんか。区切り線を引いてみましょう。……この最初の時代、タイトルを付けるなら何でしょう?」「手探りの4月、ですかね(笑)」「いいですね、採用。じゃあ障害の集中してるこのへんは?」。笑いながら付けたタイトルほど、あとまで記憶に残ります。3ヶ月の物語を1枚のボードで見渡せるようになったら、この手法の役目は完了です。ここでアクションの議論には入らず、材料が並んだ状態で次へ渡します。

詳細解説3。学びと成長(45〜60分)

手法カタログより:学びと成長のやり方

年表を見ながら、「個人の学び・成長」と「チームの学び・成長」の2つの観点で付箋に書き出す手法です。観点ごとに付箋の色を分けてください。個人ワーク5分、ラウンドロビンでの共有10分。共有では、付箋を年表の該当する場所に貼りながら話します。「このトラブルの対応で、ログの読み方が身についた」「この頃から、チームで相談してから作るようになった」。学びが、それが生まれた出来事とセットで場に残ります。

「年表を眺めて、この3ヶ月で学んだこと・成長したことを書いてください。自分のことと、チームのこと、2色で。小さなことほど歓迎です。当たり前になったことは、成長した証拠なので見逃さないでください」

コツは、他人やチームの変化に着目することです。自分の変化には自分では気づきにくいもの。でも、一緒に過ごしてきたメンバーの変化なら、はっきり見えます。「○○さん、最近レビューの指摘が優しくなったよね」。他人の変化を伝え合うと、自分の変化にも他人が気づかせてくれる。この好循環が、この15分をこの型のクライマックスにします。最後に「チームにとって望ましい変化・望ましくない変化はどんなものだったか」を5分ほど話します。この議論に結論は不要です。傾向を眺めて話すだけで、チームが次に向かう方向がにじみ出てきます。

詳細解説4。アクションプランの作成(60〜78分)

にじみ出た方向を、次の期間の目標に変換します。作るのは型④と同じく短期と中長期の2軸ですが、長期のふりかえりでは比重が逆転します。主役は中長期の目標です。「次の四半期、チームとしてどこへ向かうか」を、学びと成長のボードを根拠に決めます。3ヶ月前の自分たちより確実に成長している事実が見えているので、少しチャレンジングな目標を選ぶ勇気が湧いているはずです。

「次の3ヶ月の、チームの目標を決めましょう。さっきの成長の付箋を見てください。これだけ変われたチームなら、次は何に挑戦できそうですか」

中長期の目標が決まったら、そこへ向かう最初の一歩を短期の目標として1つ作ります。アクションは合わせて最大3つまで。フォローアップの診断で「Droppedだらけ」だったチームは、今回はあえて1つに絞ってください。そして決めた目標は、次の期間の毎週のふりかえりで見える場所に貼っておきます。3ヶ月後のフォローアップで、この目標がClosedの列に並ぶところまでが、この型のワンサイクルです。

詳細解説5。360度フィードバック(78〜88分)

手法カタログより:360度フィードバックのやり方

締めは、互いの変化を贈り合う時間です。5分ほどで、メンバーひとりひとりへのフィードバックを付箋に書きます。内容は「この期間で、その人にどのような変化が起こったか」。宛先の名前を書き、記入者は無記名で、ポジティブな変化を書きます。書き終わったら、誰か1人が付箋を宛先ごとに集めて各メンバーに渡し、それぞれ自分に贈られたフィードバックを静かに眺めます。最後に、感想と今後の抱負を一言ずつ話して終了です。

始める前に、前提をひとつ全員で確認してください。「フィードバックは、相手の成長のための贈り物」だということです。批判や非難は書きません。マイナス面に触れたいときは「yes, and」を意識して、「〇〇がよかった。さらに〇〇すれば、もっとよくなる」と、次の行動を誘発する書き方にします。無記名で、内容は公開しなくてよい、という約束が、気恥ずかしい本音を書くハードルを下げてくれます。型⑤の360度感謝が「ありがとう」を声で贈る手法だとすれば、こちらは「あなたはこう変わった」を言葉のカードで贈る手法です。節目の締めくくりに、これ以上ふさわしい時間はありません。

時間・人数が違うときの調整

120分取れる場合(推奨)
。Story of Storyを45分、学びと成長を20分、アクションプランを25分に拡張します。特に年表の共有は、時間があるだけ深くなります。リンク先の時間は90分のまま、各手法の時間を手で1.3倍してください。

90分も取れない場合
。この型は60分に圧縮するより、2回に分ける
ことをおすすめします。1回目にフォローアップとStory of Story(年表づくり)、数日以内の2回目に学びと成長から先を。年表の写真を撮っておけば、2回目は貼り出すところから再開できます。

10人を超える場合
。年表づくりは全員で1枚に。学びと成長の共有は4〜6人のグループに分け、「チームの成長」の付箋だけ全体に持ち寄ります。360度フィードバックは人数の2乗で付箋が増えるので、書く時間を10分に延ばしてください。

オンラインの場合。オンラインホワイトボードに、過去のふりかえりボードのスクリーンショットを時系列で貼った「記録レーン」を年表の下に作っておくと、対面の写真掲示と同じ効果が出ます。360度フィードバックは、宛先ごとの枠を作って付箋を投函する形にすれば、無記名性も保てます。

ここまでのまとめ

実践に入る前に、ここまでの4ステップで学んだことを、ひとつずつ思い出しておきましょう。

ステップ1:短期のふりかえりだけだと、近視眼になる
型⑦は、3ヶ月規模の長期間をふりかえる型です。得られるのは成長の実感と、軌道の修正。この型だけは、事前準備という宿題があります。

ステップ2:当日のボードを準備する
アクション総点検、3ヶ月の年表、学びと成長のレーン、過去のボード写真の帯。まずアクションのフォローアップから始めて、この3ヶ月を検査します。

ステップ3:Story of Storyと、学びと成長
この期間そのものを物語として語り、チームの流れが変わった曲がり角を探します。学びは「個人」と「チーム」の2つの観点で。この議論に結論は要りません。

ステップ4:アクションプランと360度フィードバック
主役は中長期の目標です。最後の360度フィードバックでは、この期間でその人にどんな変化が起こったかを、無記名で書き合います。

よくある疑問

Q. 3ヶ月前のことなんて、誰も覚えていない気がします
覚えていなくて大丈夫です。だからこそ記録を集める事前準備があり、だからこそ毎週の「写真を撮って解散」があったのです。写真が1枚あれば、記憶は連鎖的に戻ります。もし記録がほとんどないなら、それ自体を今日の学びにして、次の期間は記録を残すことを最初のアクションにしましょう。カレンダーやチャットのログ、リリースノートも立派な記録です。

Q. フォローアップで、アクションがほぼ全部Droppedでした。凹みます
実は、初回の型⑦での「あるある」第1位です。凹む必要はありません。全部Droppedという事実は「アクションの立て方が自分たちに合っていなかった」という、極めて有益な診断結果です。多すぎたのか、大きすぎたのか、決めた直後に見えない場所へ行ってしまったのか。原因を1つ選んで、次の期間は「アクションを1つに絞って、タスクボードの最上段に貼る」から再出発してください。3ヶ月後のフォローアップは、違う景色になります。

Q. 360度フィードバックと360度感謝、どちらを使えばいいですか?
迷ったら、チームの関係の質で選んでください。まだ互いに遠慮があるチームは、感謝から。ポジティブしかない構造なので安全です。関係の質が育ってきたチームは、フィードバックへ。「変化」を伝え合うぶん、成長への効き目が深くなります。この12週間を一緒に歩んできたチームなら、フィードバックに挑戦する土台はできているはずです。

Q. うちには四半期のような明確な節目がありません。いつやれば?
なければ、作ってしまいましょう。3ヶ月に一度、カレンダーに「チームの節目」として先に予定を入れるのです。節目とは、来るものではなく置くものです。メンバーの入れ替わりや大きなリリースが起きたときに臨時で開くのも、もちろんありです。

今週の実践

まず、次の節目の日程を決めて、90〜120分の予定をカレンダーに入れてください。そして事前準備として、この期間のふりかえりの写真とアクションの一覧を集めます。当日は上のリンクのアジェンダで、年表づくりから成長の言語化、そしてフィードバックの贈り合いまで。終わったら、年表と次の目標の写真を残してください。それが3ヶ月後のこの型の、最初の材料になります。

もうひとつ、節目には演出を。お菓子や飲み物を持ち込む、最後に乾杯する、年表の前で集合写真を撮る。小さな祝祭の記憶が、「長いふりかえりは楽しい」という感覚をチームに残し、次の節目を待ち遠しいものにします。

ひとりで試すなら、この3ヶ月の自分のアクションを一覧にして、定着したもの・消えたものを仕分けしてみましょう。消えたものの中に、再挑戦する価値のあるものが眠っていないでしょうか。

レッスン11はいよいよ最後の型。過去ではなく未来にフォーカスする、「未来を描く(むきなおり)」型です。3ヶ月の歩みを見つめたチームは、次にどこへ向かうかを描く準備ができています。

このレッスンに関連する手法

進め方の詳細は各手法ページで確認できます。

今週の実践課題

アジェンダはふりかえりを作るを開き、目的で「⑦長期間をふりかえる」の型を選ぶと3分で作れます(印刷・共有リンク対応)。

  • 四半期や期の節目に90〜120分を確保し、本文のリンクから型⑦の構成で「ふりかえりを作る」を開いてアジェンダを共有する
  • 事前準備として、過去のふりかえりの写真・ボード・アクション一覧を集めておく
  • 360度フィードバックの前に「フィードバックは相手の成長のための贈り物」という前提を全員で確認する

ひとりで進める場合:この3ヶ月の自分のアクションを一覧にして、定着したもの・消えたものを仕分けしてみましょう。消えたものの中に、再挑戦する価値のあるものはありませんか。

長期の思い出しには「時系列とイベント」の問い、成長の言語化には「学びと気づき」の問いを使いましょう。 → 問いカタログ